【広尾晃の「ネタになる記録ばなし」】青木の出塁が得点になる――生還率が高かったロイヤルズ
ブログ「野球の記録で話したい」を運営中で『プロ野球解説者を解説する』(イーストプレス刊)の著者でもある広尾晃氏。当WEBサイトでは、MLBとNPBの記録をテーマに、週2回、野球ファンがいつもと違う視点で野球を楽しめるコラムを提供していく。第9回目は「ワールドシリーズに進出した今季のロイヤルズ」についてだ。
2014/10/17
9人固定の野手起用。見逃せない青木のいぶし銀の働き
ロイヤルズの野手陣の個人成績は下表の通りだ。
まず気が付くのは、1番から9番までの選手が固定されていること(青木宣親は6回、7回くらいからダイソンと交替するのも、一つの形になっている)だ。
ジョシュ・ウィリンガムは2011年にはアスレチックスで松井秀喜と中軸を組み、29本塁打したスラッガーで、シーズン終盤に助っ人としてやってきたが、ポストシーズンに入ってからは9人のレギュラーに入り込む余地がなかった。
それほどロイヤルズの野手陣は戦力が充実している。
中でもケイン、ホスマーの中軸は当たっている。また9番においたムスタカスが4本塁打。投手は気が抜けない(ケインは驚異的な外野守備で度々チームを救っている)。
生還率を見ると、ムスタカス、ケイン、青木が6割以上。出塁すれば高い確率で還ってくる。これは打線がつながっていることを意味している。
盗塁はどうだろうか。ルーキーのテレンス・ゴアはレギュラーシーズンではわずか11試合で5盗塁。その俊足を買われて、ポストシーズンでは「いざというときの足のスペシャリスト」として代走に起用されている。
ジャロッド・ダイソンは、レギュラーシーズン30盗塁。打撃では青木に一歩及ばないため控えでの起用が多く、試合後半から代走として出場している。3回走って1回しか成功していないものの、彼の俊足も投手の脅威になっている。
青木は打率こそ、そこまでの数字ではないが、非常に良い働きをしている。
青木のポストシーズンの戦績だ。
ワイルドカードゲームでは最終回に同点に追いつく犠飛。
地区優勝決定戦では、10月5日以降は毎試合得点に絡む活躍を見せた。特に二打席目までに出塁したケースでは100%ホームに戻ってきているのだ。
青木の出塁がチームの得点に結びつき、試合の流れを変えている、と言っても過言ではない。
ロイヤルズの対戦相手は、サンフランシスコ・ジャイアンツとなった。
勢いのあるチーム同士の対戦。22日からの決戦でも、青木のしぶとい打撃・出塁が決め手になるのではないか。そして、青木を確実にホームへ戻し、リリーフ陣中心に接戦を制するロイヤルズの勝ちパターンへ持ち込めるかがポイントとなる。