黒田博樹を彷彿。故障期間を経てMLB仕様に“モデルチェンジ”した田中将大【広尾晃の「ネタになる記録ばなし」】
ブログ「野球の記録で話したい」を運営中で『プロ野球解説者を解説する』(イーストプレス刊)の著者でもある広尾晃氏。当WEBサイトでは、MLBとNPBの記録をテーマに、週2回、野球ファンがいつもと違う視点で野球を楽しめるコラムを提供していく。今回は投球スタイルを変えた田中将大についてだ。
2015/09/30
Getty Images
故障前はMLB屈指のパワーピッチャーだったが
田中将大は右太ももの張りで、9月18日の登板を最後にマウンドを離れていたが、10月1日の登板が決まった。このままいけば、ワイルドカード・ゲームでの先発が予定されている。
今季は、「右ひじの不安」と戦いながらマウンドに上がってきた。戦線離脱があり規定投球回数には達しなかったものの、2年連続二けた勝利を挙げ、チームのポストシーズン進出に貢献した。
MLBに移籍してからの全登板成績を見てみよう。
オレンジ色はQS(先発で6回以上投げて自責点3以下)、赤色はHQS(先発で7回以上投げて自責点2以下)。
昨年、MLBデビューをした田中は、初登板から16試合連続QS、内容的にも素晴らしく、注目を集めた。
NPBで一線級の投手がMLBで通用することは、黒田博樹やダルビッシュ有などである程度証明済みだったが、田中の快投はその予想をも上回っていた。
特に奪三振率(1試合完投したとしての三振数)は、9を大きく上回った。鋭く落ちるスプリッタ―に加え、勝負どころでは“ギアチェンジ”と評される155km/h前後の速球を打者の手が出ないコーナーにずばっと投げることができる。
田中はMLBでも一線級のパワーピッチャーだと評された。
しかし7月に入ると成績が急落し故障者リストに。右ひじ靱帯の部分断裂と診断された。アメリカではトミー・ジョン手術を受けることが多いケースだが、ヤンキースは温存療法を選択。田中はPRP療法を受けてリハビリに入った。8月にはダルビッシュ有も右ひじの炎症で故障者リスト入りする。
米メディアでは、日本人投手は肘を酷使しているのではないかと報道した。田中は秋にはマウンドに復帰するも、登板内容は芳しくなかった。
2015年春にはダルビッシュがトミー・ジョン手術を選択する。
一方、田中はそのままマウンドに上がった。昨年春とは打って変わった不安定な登板が2試合続き、4月後半には2試合連続で好投したが、右手首のけんしょう炎と前腕部の炎症で故障者リスト入り。
右ひじの状態との関連が取りざたされ、米メディアや野球関係者の間から、「田中もトミー・ジョン手術を受けるべきではないか」という声が上がった。
それでも田中は5月をまるまる欠場して6月に復帰すると、以後は安定感のある投球を続けている。