黒田博樹を彷彿。故障期間を経てMLB仕様に“モデルチェンジ”した田中将大【広尾晃の「ネタになる記録ばなし」】
ブログ「野球の記録で話したい」を運営中で『プロ野球解説者を解説する』(イーストプレス刊)の著者でもある広尾晃氏。当WEBサイトでは、MLBとNPBの記録をテーマに、週2回、野球ファンがいつもと違う視点で野球を楽しめるコラムを提供していく。今回は投球スタイルを変えた田中将大についてだ。
2015/09/30
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2014年デビューと現在は何が変化したのか?
田中のMLBのキャリアは
(1)2014年、デビューから右ひじの故障で戦線離脱するまで
(2)2014年秋の復帰から、翌年5月、再び故障者リスト入りするまで
(3)2015年6月の復帰から現在まで
の3つの期間に分けられると思われる。
このうち(2)は、右ひじに不安を抱えながらの模索の期間と言える。成績は良くない。
(1)の期間はNPBの投球スタイルをベースに快投した時期であり、(3)は故障を克服してMLBに適応して好投した期間だと言えよう。
(1)と(3)の期間の投球内容を子細に見ると、田中が故障を経て変化しつつあることが読み取れる。
両期間の詳細な投球データだ。
(1)の期間は18試合129.1回、(3)は19試合126.2回とほぼ同じくらい投げている。勝敗、防御率などの数字は、(1)の期間のほうが良い。(3)の期間では田中の防御率は3.41。平凡な数字ではある。
しかしQS数は(1)が16、(3)が15と大差がない。(3)の期間、田中は多少打ち込まれても試合を作ることができている。
(1)の期間の田中は奪三振率が9.39とイニング数を上回っている。(3)では7.96。空振り%は(1)が13.9%、(3)が12.1%。しかしゴロアウト数が(1)では169、(3)は181と増えている。(3)の田中はパワーピッチャーとして打者を圧倒していたが(2)の田中は、三振を奪うことよりアウトカウントを多くとることを優先していた。球を低めに集めて打たせて取ることを重視していたのだ。
この表にはないが、(1)の期間、田中はフォーシーム、スライダー、スプリットで投球を組み立てていたが、(3)の期間では3つの球種に加え、ツーシーム、カットボールなども投げるようになった。多彩な球種で打者を打ち取ることを考えたのだ。
その分、“ギアチェンジ”と言われた速球やスプリットが減ったことで、被本塁打は15本から22本と大幅に増えた。防御率が悪いのは主としてこれが原因だろう。
しかし田中の四球は相変わらず少ない。与支給率は(1)が1.32、(3)が1.35、完投しても1人歩かせるかどうかだ。
ストライク%は、(1)が67.5%、(3)が67.7%。先発投手の合格ラインは63%前後とされるから、非常に優秀だ。
精度の高さはMLBデビュー時から変わっていないのだ。
平均登板間隔は(1).59日から(3)4.94日へ。平均投球数は(1)104.94から(3)96.68球へ。ヤンキース、ジラルディ監督は田中将大を慎重に起用していることがわかる。