【小島克典の「通訳はみだし日記」】青木から通算盗塁成功率85.7%の男・ダイソンへ代走! 快進撃ロイヤルズを支えるもう一つの〝勝利の方程式〟
横浜ベイスターズ、サンフランシスコ・ジャイアンツ、ニューヨーク・メッツの3球団で通訳として活躍した小島克典氏による書き下ろし連載「通訳はみ出し日記」。連載4回目は、プレーオフ8連勝でワールドシリーズへ進出したロイヤルズの「二つの〝勝利の方程式〟」についてだ。
2014/10/23
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メジャーに存在する盗塁に関する2種類の作戦
昨年まで2年連続30盗塁、今季も17盗塁を決めている青木は、充分な走塁能力を有する選手だ。しかしさらに万全を期すこの代走作戦には、細かなニュアンスの理解を求めるベンチの意図が見え隠れする。
日本ではあまり知られていないが、メジャーの盗塁には「this ball steal(この球で走れ)」というベンチからのコマンド(作戦)と、「green lightだからgood jumpを切れたら仕掛けてよし」の2種類がある。
前者はベンチの作戦(次の投球で盗塁しろ)で、主に投手の傾向から、次の配球が変化球の時や、打者が追い込まれた際に出される。
一方の後者は、青信号を意味するグリーンライトを与えるベンチと、良いスタート(英語ではグッドジャンプと呼ばれる)が切れたら仕掛ける選手の意思の疎通が欠かせない共同作業だ。
察するにロイヤルズベンチは、相手バッテリーの配球を読みながら、盗塁のコマンドと、行けたら行けのグリーンライトを、巧みに使い分けているのではないだろうか。
メジャーのコーチの中には、時に英語を母国語としない外国人選手とのコミュニケーションにストレスを感じるコーチもいる。仮にどれほど有能な通訳がサポートしていても、ダイレクトな意思疎通ができない限り、ストレスがゼロになることはない。
ロイヤルズのコーチ陣がどうかはわからないが、異国でプレーしていると、ある局面では「仕方のないこと」と割り切る場面は避けられない。
2013年のWBC準決勝では、グリーンライト作戦の不徹底で、終盤の好機を逸した侍ジャパン。世界レベルのベンチワークという観点では、ロイヤルズの緻密な野球から学ぶべきことがあるかもしれない。