歩く姿から見て取れる、大谷翔平の「軸」。一流の打撃を可能にする内転筋軸の働き
2022/10/12
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大谷翔平コラム
ロサンゼルス・エンゼルスの大谷翔平選手が、今年も二刀流で米球界を席巻。運動科学研究の第一人者・高岡英夫氏によると、内転筋軸に秘密があるという。9月19日に発売した同氏の著書『内転筋軸トレーニングで、パフォーマンスが上がる!』より、その一部を紹介する。
無駄のない立ち姿
最初に取り上げるのは、2021年にメジャーリーグでシーズンMVPを獲得した大谷翔平選手です。大谷選手が歩いている姿を思い浮かべてください。彼が特に調子がいい時は、全身がタラーンとして、顔も他の選手と明らかに違います。他の選手は気合いの入ったキツイ顔をしているのですが、大谷選手は非常にゆるんだ、タラーンとした表情をしています。もちろんバッティングが近づいてきたり、ピッチャーとしてマウンドに立ったりすると表情もピリッとしてきますが、それでも他の選手と比べるとタラーンとしているのがわかります。
そして歩いている姿を見てみると、全体にスーッと何かが通っているのが感じられませんか。それこそが軸です。そして、その軸がスーッと通っている分、歩いている姿もタラーンとしています。タラーンと脱力しながら、ゆるんで軸が通って歩く姿が非常にキレイで、他の選手に比べて無駄がありません。
今度は大谷選手がバッターボックスに入った姿を思い出してみてください。テイクバックしたときに特徴があります。彼の場合、ピッチャー側が右脚ですが、キレイに膝がキャッチャー方向に引けています。彼ぐらいまで右脚をキレイに引けている選手は、メジャーリーグの中でも他にはほとんどいません。最もキレイに引けている選手と言ってもいいでしょう。膝がキレイに引けるということは、腿が股関節を中心に、ペターッとキャッチャー方向に寄ってきているということです。
しかし普通は、身体の大きな質量を持った右脚がキャッチャー方向に寄ってくれば、その右脚が寄る前に、左脚は外側へ、位置関係で言うとキャッチャー方向へ移動してしまいます。つまり、右脚に押されて影響されるようにして開き気味になってきてしまうということです。足裏で見たときに、左足裏のどこに体重が乗ってくるかというと、足の外側、小指側です。左の外足、すねの外側の腓骨に体重が乗り、左の膝関節がキャッチャー側に開いてしまう状態になってしまうのです。
ところが大谷選手の場合は、右の膝と太腿がグッと寄ってきても、左の脚は決して外側に開きません。体重が左足の小指側、腓骨側に乗って、外側に割れてしまうということもありません。調子のいい時の大谷選手は、ピタッと右脚の腿と左脚の腿が吸い寄せられるように接近していきます。