田中も打席で負傷。故障回避優先か、本来のベースボールの姿か? ナ・リーグ、DH制導入の是非
21日、ロブ・マンフレッド・コミッショナーは、早ければ2017年シーズンにもDH制が導入される可能性に言及した。
2016/01/25
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DH導入賛成派の意見は?
流れは導入に傾きつつあるか。ナ・リーグで噂され始めたDH制についてだ。2日間のメジャー・オーナー会議を終えた21日、ロブ・マンフレッド・コミッショナーは早ければ2017年シーズンにもDH制が導入される可能性を示唆した。
「以前議論された20年前には、多くのナ・リーグのオーナーが否定的な考えだった。だが、時代が違う。我々は、歴史と伝統に敬意を払った上で、ファンのための変革を推し進める集団だ」
コミッショナーのコメントを聞いた米メディアは、そろってDH制導入の可能性に触れた。MLBの競技運営最高責任者を務めるジョー・トーリ氏は「その件に関しては、まだ何も話し合われていないよ」とオーナー会議後にクギを刺したが、各球団首脳の姿勢も鮮明になってきている。
導入派の旗頭はカージナルスのジョン・モゼリアクGM。16日の球団ファンフェスタ会場で「導入への機運は高まってきている」と口にした。
カージナルスは、エースのアダム・ウェインライトが昨年4月に打席で左アキレス腱を断裂。シーズンの大半を棒に振った経緯がある。
導入派の主張には、こうした投手の不必要な故障を避ける狙いがある。
昨季からア・リーグのタイガースから、DH制のないナ・リーグのナショナルズに移籍したマックス・シャーザーは、開幕直後の打席で右手親指を負傷。先発を1回スキップし「誰も投手の打席を見るために球場に来ていない。ルールを統一すべきだ」とDH制導入を訴えた。
08年にはヤンキースの王建民が、インターリーグ(交流戦)で当時はナ・リーグだったアストロズ戦に先発。敵地で打席にも入り、走塁中に右かかとを故障した。前年まで2年連続19勝を挙げ、当時アジア最高の投手と言われていた右腕。この故障をきっかけに、以降7年間でわずか8勝と輝きを完全に失った。
昨年、敵地でナ・リーグ、ニューヨーク・メッツとのインターリーグ戦に先発登板した田中は、普段立たない打席で送りバントを試み、一塁に向けて走った際に右太ももを痛めた。
ただでさえ近年は、投手の本業での肩、肘の故障が増加傾向。有力投手の故障離脱は球界全体の損失と考えられており、本業以外での故障は避けるにこしたことはないというわけだ。