【アメリカの眼】全投球の95%が速球。「速球しか投げない投手」を補強したロッキーズの新たな実験
ロッキーズが今オフ獲得した2投手は速球の割合が95%にも上る、速球しか投げない投手として知られている。変化球が曲がりづらい本拠地の特性を克服するべく講じたロッキーズの補強策は吉と出るのだろうか。
2016/01/31
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カギは本拠地
ダイヤモンドバックスとジャイアンツが揃って大物投手を獲得、地区3連覇のドジャースも前田健太やスコット・カズミアーを加えるなどナリーグ西地区の動きが目立っている今オフ。そんな中、今MLBでは大物投手をかき集めている同一地区のライバルを尻目に静かながらも興味深い動きを見せているある球団が注目を集めている。
『MLB.com』は「ロッキーズが速球のスペシャリストをコレクションしている」と題して、その補強策を報じた。
5年連続88敗以上と低迷が続くロッキーズ。
今オフの補強も中堅クラスのリリーフ投手と外野手を加えただけで、目立った動きはないが、獲得したリリーフがジェイソン・モット、そしてジェイク・マギーという2投手であることは見逃せない。この2人の特徴としてあげられるのが「速球しか投げない」であることだ。
過去2年間で100人以上の打者と対戦した投手のうち最も投球に占める速球の割合が多かったのがモットでその割合はなんと95.5%、2位はマギーで94%となっている。
Motte, the closest thing baseball has to a fastball-only pitcher, signed with the Rockies on Dec. 8. McGee, who throws fastballs more often than any other lefty, was acquired by Colorado from Tampa Bay in a deal involving outfielder Corey Dickerson on Thursday. (中略) Throwing a ton of fastballs may not be the only reason the Rockies liked this pair, but it sure can’t be ignored.
「速球しか投げない投手」に最も近い存在であるモットは、12月8日にロッキーズと契約を結んだ。今週木曜には左投手の中では最も速球の割合の多いマギーも、コーリー・ディッカーソンとのトレードでタンパベイからコロラドへと移ってきた。速球の割合が非常に多いことだけが彼らを獲得した理由ではないだろうが、これが無視できない要素であることは間違いない。
ではなぜロッキーズは彼ら速球しか投げない投手に活路を見出したのか。
その理由は彼らの本拠地であるクアーズフィールドにある。標高1600M(1マイル)にあるため、打球がよく飛ぶことで有名だが、それに加えて高地では空気抵抗が少ないため変化球も曲がりづらい。このため元ロッキーズのチャシーンが、自分のウイニングショットであるカーブを本拠地では投げていないと明かしたように、この球場でカーブやチェンジアップといった変化球を投じることを控える投手が多い。
データを見ると、ロッキーズ投手陣はアウェイに比べホームで投げる時には、速球の割合が3%上昇している。MLB全体でも2%前後上昇しており、中にはザック・グレインキー(本拠地53.6%→クアーズ74.1%)のように、ほぼ別人のようなピッチングの組み立てをする投手までいる。