【MLB】ヤンキース、田中「一発病」からの脱却。豪快さ潜めるも、身につけた『試合を支配する力』
今季は1勝止まりも、これまでの投球内容は昨年とは違う安定感がある。何よりも注目すべきは被本塁打率の低さだ。
2016/05/09
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球速は平凡も、ピッチャーとして最高の結果
27歳にして、老獪さを漂わせた。ヤンキース・田中将大が5日のオリオールズ戦で今季最高の投球を演じた。8回を投げ5安打無失点。0-0のまま降板し、白星こそ付かなかったものの、相手打線に付け入る隙を与えなかった。
「調子はそこまで良かったとは感じなかったが、試合の中で『いいぞ』という感じが出てきました」と自身のブログで振り返った田中。「バッターと勝負しながらアウトを積み重ねていけた。感覚的なことで難しいんですが、良い集中力を保って投球できた」と16年ベストピッチを評している。
102球のうち、最速は92マイル(148km)。楽天時代はおろか、駒大苫小牧時代のマー君からしても物足りない。それも片手で数えるほどで、ツーシームと見られる速球系は大半が90~91マイル止まり(約145~146km)。それでも試合を支配できたのは、「バッターとの勝負」を徹底して突き詰めたからだ。
マウンドで球速を求めるあまり、自分と格闘しているのかと見まがう投手は意外なほど多い。特に若い投手か。彼らは「投げ屋」と呼ばれ、「ピッチャー」ではないとさえ言われる。
この日の田中は紛れのない「ピッチャー」だった。
速球はフォーシームではなくツーシーム主体。スライダーは大きく横に曲がるものと、縦に鋭く変化する2つを打者やカウントで使い分けた。宝刀スプリットは空振りを奪うだけでなく、走者を背負ってからはゴロを打たせての併殺など使用用途がさらに広がった。