【ド軍番米国人記者の眼】前田健太が証明した精神面の強さ「打者有利な2球場で、打者をイラつかせた」
ドジャース前田健太は、打者に有利なデンバーでもトロントでそれぞれ異なった組み方で相手打者を翻弄した。
2016/05/10
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指揮官も絶大な信頼
そして、6日(日本時間7日)には、ドジャースはカナダへ遠征に向かった。トロント・ブルージェイズを相手に、再び過去に経験のない環境に対峙しながらも、前田は再び素晴らしい投球を披露してくれた。
ブ軍といえば、2015年の球団得点率首位という強力打線が有名だ。さらに、本拠地のロジャーズセンターは、MLB30球場の中での得点率が5位という、こちらも打者天国の環境だ。
その上、前田にとっては初めてのDH制のあるアメリカンリーグのチームと対戦した。前田が先発した6日のDHはエドウィン・エンカーナシオン。昨年39本塁打を記録した大砲だった。
だが、前田はひるまなかった。
この日の前田は、102球を投げ6回を投げて、2安打2失点、7三振4四球。3回に1安打を許すと、6回には昨シーズン40本塁打を記録したホセ・バティスタに2ランを浴びたが、本塁打を許した以外の投球は素晴らしかった。
試合は2-5で敗れ、前田はこの日の試合をこう振り返っている。
「今日は慎重に、そして正確なピッチングができたけれど、あの1球だけが失投だった。バティスタにホームランを打たれてしまったあの1球だけは、後悔している」
前田は、この2週間に、北米屈指の球場2つで登板し、5安打2失点。ロッキーズ戦では直球を中心に試合を組み立て、ブルージェイズ戦ではスライダーを中心に試合をまとめた。それぞれの試合に、異なった作戦で挑み、両方のチームの打者をイラつかせることに成功した。
ドジャースのデーブ・ロバーツ監督は、ブルージェイズ戦を終えて次のようにコメントした。「毎回、この試合が彼のベストだと言っている気がする。彼はいつも安定している。勝負強く、どんな打者も抑えることができる。5試合ごとにチームに勝てるチャンスを与えてくれる上に、5試合ごとに特別な試合を作ってくれる。素晴らしい投手だ」
現在も、防御率1.66といまだに素晴らしい成績をキープしている。ナショナルリーグの新人王候補の筆頭に躍り出た。
前田の数字は依然目を見張るが、それ以上に印象的なのが、彼の精神面だろう。
ピンチの場面で冷静さを失わず、打者に有利なデンバーでもトロントでも、前田は、バットをクラブハウスに叩きつける、なんていう状況には陥らなかった。実際に悔しい思いをしたのは、前田と対戦した、ホームチームの打者達であった。