【MLB】ダルビッシュ、150キロ代の速球連発にアメリカが注目。トミー・ジョン手術は魔法の特効薬か
手術明け、ダルビッシュ有の速球がうなりを上げている。
2016/05/10
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日本人投手も手術後は明暗わかれる
実際に同手術を受け、復帰後に球速が増す投手もいるが、統計上は圧倒的に球速が落ちる投手のほうが多い。また再手術に追い込まれるケースも目立つ。
日本人でいえば、松坂大輔(ソフトバンク)、和田毅(同上)、藤川球児(阪神)の同学年3人は、全員が米球界在籍中にトミー・ジョン手術を受けたが、術前に比べて高いパフォーマンスを発揮しているとは言い難い。
現在中日の2軍投手コーチを務める大塚晶文は、レンジャーズ時代の08年に同手術を施したが、その後2度もの再手術に追い込まれ、結局復帰は叶わなかった。
一方で、田沢純一(レッドソックス)は10年4月に同手術を受け、復帰後は球威の増した速球でセットアッパーの地位を確立。13年ワールドシリーズ制覇に大きく貢献した。
田沢の場合も、ダルビッシュ同様に過酷なトレーニングの成果と見るべきだろう。手術前に比べて体は一回り以上大きくなり、明らかにパワーアップして帰ってきた。
過去の膨大なサンプルから1つ間違いないのは、同手術を受けるならば若ければ若いほど、復帰後も活躍できる可能性が高い。
かつてニューヨーク・タイムズ紙のコラムに「高校球児がクリスマスのプレゼントに、トミー・ジョン手術をねだる日が来る」とまで投稿され、一時は「魔法の特効薬」ともてはやされたこともあった。だが、手術そのものが投球を劇的に変えるわけではなく、ある意味そこにはリスクしかない。
そのリスクを取ることで生じる時間を、どのように生かせるか。ストイックに、そして効果的に自身を追い込み、トレーニングを積むことができれば、投手として一回り大きく成長できることができるのかもしれない。
移植した靱帯に、魔法なんて誰もかけられない。野球ができない1年以上に及ぶ膨大な時間。それをファンからしてみれば魔法のような成長につなげられるのは、被術者本人の日々の努力でしかない。