ロイヤルズを変えた、青木宣親の侍スピリット――〝FOR THE TEAM〟という精神
29年ぶりにワールドシリーズ出場を成し遂げたロイヤルズ。若手選手が多い中で、青木宣親の果たした役割は計り知れない。プレーだけでなく、野球に取り組む真摯な姿勢は若手選手の意識も変えた。
2014/11/29
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青木が感じたロイヤルズの課題
オリオールズとのリーグ優勝決定戦を制し、〝夢の舞台〟ワールドシリーズ初出場を決めた試合後だった。
シャンパンファイトを終えた青木はグラウンドに飛び出し、誰もいないセンターフィールドに向かった。
次の瞬間、人目はばからずにその場に倒れ込むと大の字になって空を見上げた。
「世界一までもう少しだ!」
果てしなく広がる夜空を見上げながら、スタウンドからのロイヤルズファンの歓声が耳に入る。
「いつかやってみたかった」――23番にとって、最高に贅沢な時間だった。
〝FOR THE TEAM(チームのために)〟この言葉を胸に今シーズンを戦い抜いた。
メジャー最初の2年間プレーしたブリュワーズから、昨年オフにロイヤルズへトレードされた。リードオフマンとして前年得点力不足に苦しんだチームの救世主として迎え入れられると、青木自身も「優勝の可能性を秘めたやりがいのあるチーム」と口にした。
だが、いざキャンプインするとそこにはあってはならない光景があった。
「若手中心のチームゆえに、選手がアップに遅れたり、練習もダラダラしたりとばらばらだった」と当時のチーム状況を振りかえる。
選手同士仲が良く明るいチームである反面、そこには規律というものが存在しなかった。
32歳の青木はレギュラー陣の中で、今季から加わったインファンテとともに最年長。プロ入り11年目を迎え「チームの模範にならなきゃいけないと感じた」。練習の姿勢やベンチでの態度では、常に若手の模範になるようにベテランとして、プロに徹することを心がけた。