大谷翔平選手をはじめとした日本人メジャーリーガーを中心にメジャーリーグ・日本プロ野球はもちろん、社会人・大学・高校野球まで幅広いカテゴリーの情報を、多角的な視点で発信する野球専門メディアです。世界的に注目されている情報を数多く発信しています。ベースボールチャンネル



ロイヤルズを変えた、青木宣親の侍スピリット――〝FOR THE TEAM〟という精神

29年ぶりにワールドシリーズ出場を成し遂げたロイヤルズ。若手選手が多い中で、青木宣親の果たした役割は計り知れない。プレーだけでなく、野球に取り組む真摯な姿勢は若手選手の意識も変えた。

2014/11/29

text By

photo

Getty Images



ベンチから声を出すベテランの姿は、若手にいい影響を及ぼした

 5月19日の試合。1点を追う9回に左前打で出塁した青木に信じがたい事態が待ち構えていた。俊足として知られる青木にメジャー初となる代走が告げられた。

 代走のダイソンは控えという立場ながらも昨季34盗塁を記録し、メジャー有数の俊足と知られている。だがヤクルト時代の06年には盗塁王に輝き、メジャー1年目には30盗塁も記録している青木のプライドもある。

「悔しいけど、見る限りではメジャーで一番足が速い選手。しょうがない」と試合後に話をしていたが、「あの時は悔しくてしょうがなかった」と後に素直な気持ちを打ち明けていた。

 ダイソンはその俊足を生かした広範囲に渡る守備力も首脳陣に買われていた。
 皮肉にも後半戦に入ると試合中盤から終盤にかけて青木の代走で交代し、そのまま守備固めというのがロイヤルズの必勝パターン化し、青木がスタメンを外れる日も少なくはなかった。

 プロ入り2年目以来レギュラーとして出場してきたベテランにとって初めて味わう屈辱であり、悔しさのあまり数時間程度しか眠れぬ日もあるほどだった。
 それでも青木はベンチから声を出し続けるなど〝FOR THE TEAM〟の精神を最後まで貫ぬき通した。

「もちろん試合に出てチームに貢献したいという気持ちはあったけど、ベンチで声出して選手を鼓舞することが必要だと感じた」

 その青木の姿に共感する若手選手も日に日に増すと、いつしか青木の元へ歩み寄りアドバイスを求める選手も現れるようになった。
 シーズン終盤にかけてひとつに結束し成長したチームは、まさかの快進撃で念願のワールドシリーズまで駒を進めた。

 29年ぶりのプレーオフ出場を決めたワイルドカード進出決定戦を制した試合後だった。つい先日の日米野球での来日も記憶に新しいガスリーはこう語った。

「ノリがこのチームのMVPだよ」

 青木が教えた侍スピリットは、来季以降もしっかりロイヤルズに受け継がれることに違いない。

1 2


error: Content is protected !!