【MLB】『メッツ・イチロー』叶わず、バレンタイン元監督が明かす真相。当時GM「我々は愚かだった」
ボビー・バレンタインがメッツ監督時代、イチロー獲得を目指していたと『ウォール・ストリート・ジャーナル』に明かした。
2016/07/25
Getty Images
アジアに積極的なメッツも踏み切れなかったイチロー獲得
メッツは可能性を秘めた選手を獲得するために、アジアにもしっかりと目を向けてきた。日本人スカウトを早くから現地で採用した球団の一つでもあり、実際、これまでMLB最多の12人の日本出身の選手と契約している。
しかしイチロー獲得時は、状況が違う。
NPBで実績を残しても、MLBで通用するのかという疑問は常に付きまとった。
しかも野手はまだ誰一人としてNPBからMLBへの移籍が実現していなかった。
イチローへの評価も同じだった。
MVPを3度受賞していたにも関わらず、変則的な打撃フォームはこれまでアメリカの野球界でも見られたことがないものだった。
当時ニューヨーク・メッツのアシスタントGMを務めていたジム・デュケットはチーム内で「彼から何を期待する?」という討論が常に行われていたと、明かした。
イチローのスイングをビデオで見た印象としては、MLBで通用するのか全くわからなかったという。
それでもメッツのスカウト陣はイチローに対して好意的な印象を持ち、MLBでも結果を残せると信じていた。だがどれほどの活躍を見せるかは、誰も想像ができていなかった。
当時メッツのスティーブ・フィリップスGMは、「3割を打たなければインパクトがある選手とはなれない。だとしたら入札金、契約金をいくら提示してまとめるのかは大きな疑問だった」と振りかえる。
チーム内での話し合いの末、フィリップスGMはイチローに対して900万ドル以上の額で入札をしたことを明かした。「可能性はある」と踏んでの入札だったが、同じ日本人の野茂英雄獲得で大きく成功したロサンゼルス・ドジャースと、日本企業がオーナーであったシアトル・マリナーズは気になる存在だったのは間違いない。
入札額を決断したあともフィリップスGMは、すぐさま買い手ならではの後悔の念が襲ったという。未知の選手に対して払いすぎだったのではないかという不安だ。
結果として、シアトル・マリナーズが約1312万ドルで落札し、イチローと3年1400万ドルの契約を結んだ。その契約以降、イチローは球史に名を残す選手となることは周知のことだろう。
“We were all idiots, there’s no doubt. Even Seattle should have been way more than $13 million considering what he became, Once we saw him play, instead of buyer’s remorse I said we should have doubled our offer.”
「我々はみな愚かだった、それは間違いない。イチローの今を考えれば、シアトルも1300万ドル以上を出すべきだった。彼のプレーを見てからは、買い手の後悔ではなく、入札額を倍にするべきだったと思い返したよ」
フィリップスとデュケットは、ともにバレンタインがイチロー獲得に向けて強く支持していたことにも触れた。それでもバレンタインは当時チーム関係者から「何故シングル(単打)しか打てない選手を外野に置く必要がある?」と尋ねられたという。
バレンタインはその答えに対し、「それは200本打つからだよ」と返答したという。
こうして、メッツは”Once-in-a-generation player(1世代に1人である逸材)”のイチロー獲得を逃すこととなった。
出典:Mets look back at how they let Ichiro slip through their hands by Jared Diamond in Wall Street Journal on July 22nd, 2016