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「投高打低」に大きく振れたMLB、来年はどうなるのか?【広尾晃の「ネタになる記録ばなし」】

ブログ「野球の記録で話したい」を運営中で『プロ野球解説者を解説する』(イーストプレス刊)の著者でもある広尾晃氏。当WEBサイトでは、MLBとNPBの記録をテーマに、週2回、野球ファンがいつもと違う視点で野球を楽しめるコラムを提供していく。今回は、今季のMLBの投手野手の統計をとってみた。

2014/12/08

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薬物規制の影響が打者の数字に影響

 シーズンが終わってMLB各球団、各選手のSTATSを検証するシーズンに入っている。今年の成績るを見ると、打者の元気がなかった。
 ド派手な本塁打記録も生まれなかったし、全体的に打率も低かった。
 
 言いかえれば、素晴らしい成績を収めた投手がいたということになる。
 ナリーグでは打者から選出されることが多いMVPに、ドジャースのエースであるクレイトン・カーショウが選ばれた。
 
「投高打低」――これが、今年のMLBの最大のトレンドだ。
 
 21世紀以降のMLBのOPS(長打率+出塁率 打者の総合指標)の推移を見ていこう。
 
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 MLBではアリーグのほうが常にOPSが高い。これはアリーグがDH制を導入しているからだと言われる。またニューヨーク・ヤンキースなどアリーグの資金力が豊富な球団が、ナリーグの長距離打者を次々と獲得したから、いう一説もある。
 
 2001年から2009年までは、OPSは上下動を繰り返していたが、2010年にOPSは急落。そして今年、さらに大きく下落した。ナリーグの平均OPSは7割を切ったのだ。
 
 NPBも2011年に「投高打低」に大きく振れた。しかし、これは「統一球導入」というはっきりした原因があった。
 MLBの場合は、そうした制度やレギュレーションの変更はない。ボールもバットも変わらないし、スタジアムも大きく変わらない。
 
 では、なぜここまで大きな変化があったのだろうか?
 
 一つには、薬物規制の強化があげられよう。
 イチローがアメリカに渡った2001年、ナリーグ、ジャイアンツのバリー・ボンズが73本塁打の新記録を打ち立てた。そして後ほど、これが薬物の力を借りていたことが明らかにされた。
 薬物に頼らないオーガニックな打者の飛距離は、明らかにそれ以前よりも落ちる。
長打が減ったのはこれが一因ではないかと言われる。投手も思い切って攻めることができるようになった。
 
 また投手陣の進化もあげられる。
 今世紀に入ってチェンジアップやナックルカーブなど、打者を空振りに仕留める「マネーピッチ」の精度が高まった感がある。NPB出身の投手が伝家の宝刀とする「スプリッター」もその一つだろう。
 
 制球力含め、総合的に投手の能力向上が、相対的な打者の退潮に結びついたのではないか。
 
 さらに世代交代期にあることも影響しているかもしれない。21世紀初頭に大活躍をした打者たちが次々とリタイアしている。それに代わる選手も出てきているものの、まだ覇権をうかがうレベルに達している選手は数少ない。
 MLB各球団ともに、打者に関しては過渡期ということが言えるのではないか。

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