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「投高打低」に大きく振れたMLB、来年はどうなるのか?【広尾晃の「ネタになる記録ばなし」】

ブログ「野球の記録で話したい」を運営中で『プロ野球解説者を解説する』(イーストプレス刊)の著者でもある広尾晃氏。当WEBサイトでは、MLBとNPBの記録をテーマに、週2回、野球ファンがいつもと違う視点で野球を楽しめるコラムを提供していく。今回は、今季のMLBの投手野手の統計をとってみた。

2014/12/08

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「足」を活かして勝ち星を稼ぐチームはわずか

 投打のバランスが変わりつつあることを見るために、アナ両リーグの30本以上の打者数と、防御率2点台以上の投手数を見ていこう。
 
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 2001年のナリーグは、前述のとおりバリー・ボンズが73本塁打を打った年。この年の防御率2点台以上の投手はナリーグはわずか2人、アリーグは0だった。
 
 年によって浮き沈みはあるものの、徐々に投高にシフトしていることがわかる。
 今年はアナ両リーグで30本塁打以上の打者はわずか10人に過ぎなかった。
 
 投打のバランスが変わっているのだから、MLBの戦略、戦術も変わってきているに違いない。そう思っていろいろなデータを調べてみた。
 
 おそらく、各球団はスモールボールを採用しているに違いない、盗塁企図数や犠打数は増えているだろう、と考えたのだ。
 
 しかし予想に反して1試合当たりの盗塁企図数は2001年がア1.02個、ナ0.85個に対して、2014年はア0.78個、ナ0.79個。
 犠打数は2001年がア0.24個、ナ0.41個(投手が打席に立つナリーグのほうが常に犠打数が多い)、2014年はア0.19個とナ0.34個とむしろ減少していた。
 
 投手の平均投球回数は6回前後で変化なし。先発投手のQS%(6回以上投げて3失点以下で抑えた比率)は48~49%から51%と微増にとどまっている。
 
 このコラムで、ドジャースやロイヤルズのように「足」を活かして勝ち星を稼いだ球団を紹介した。しかし、そうしたトレンドは全体に普及したわけではない。
 
 投打のバランスが変わったからといって、MLBは攻守のスタイルを早急に変えたわけではない。
 フロントや指導者たちは、もう少し長い目でトレンドを見ているのだろう。
 
 これらの数字を調べて、今後の展望もいくつか見えてきた。
 
 一つは希少価値が高まった長距離打者の評価が高騰しつつあること。今年37本で本塁打王を獲得したジャンカルロ・スタントンは13年3.25億ドルという北米スポーツ史上最高額でマーリンズと契約を締結しなおした。
 
 多少荒っぽくとも一発が期待できる選手は、今後、重宝されそうだ。
 
 もう一つは「ゆりもどし」。
 今、MLBに起こっている投打のバランスの変化は、確たる要因があるわけではない。投打の力のバランスが崩れたことが原因だ。
 だとすれば、打者の巻き返しが今後起こるかもしれない。
 
 今、マイナーからMLBに上がる中には何人かのスラッガーも含まれている。こうした若い勢力が、再び投手からアドバンテージを奪う可能性もあろう。
 
 球団側にも投手戦が続くのは面白くないと、球場を狭く改造する動きが出ている。
 
 こうしたケミストリーの変化によって、来季はまた新しい動きがあるのではないか。来季も「投打のバランス」に注目したい。

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