【MLB】岩隈・田中・前田、好成績の要因は制球力の高さ。チーム先発の柱、シーズン規定投球回クリアへ
今年のMLBでプレーする日本人選手はどうしてもイチローがクローズアップされがちだが、3人の日本人投手も開幕からローテーションを守り、しっかりと成績を残してきた。
2016/08/23
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エースの抜けた穴をカバーした岩隈と前田
なかでも、岩隈と前田の働きは価値が高い。マリナーズではエースのフェリックス・ヘルナンデスが故障に見舞われ、2カ月近く投げられなかった。岩隈がいなければ、マリナーズはワイルドカードを争うポジションにいられただろうか。前田のいるドジャースも、状況は似ている。クレイトン・カーショウは6月下旬に離脱したきり、いまだに戻ってきていない。残る田中はエースなので、チーム最多のイニングは当然と見ることもできるが、これまでは規定投球回に届かなかったことを思えば、こちらも評価できよう。
投球内容に目を向けると、3人に共通するのは制球の良さだ。田中と岩隈の与四球率は2.00を割っており(1.51と1.95)、前田も2.30と低い。もちろん、単純に多くの球をストライクゾーンに集めているわけではなく、ゾーンのボーダーに投げるとともに、ゾーンの内から外へと変化させている。そのことは、ボール球に対する打者のスイング率がよく示している。PITCHf/xのデータによると、田中は38.2%、前田は34.4%、岩隈は33.2%だ。これらは、先発投手の上位4分の1にランクインしている。
また、他の共通点としては、投球間隔の長さも挙げられる。田中のペース(投球と投球の平均間隔)は25.3秒、岩隈は24.9秒、前田は23.8秒だ(PITCHf/xより)。こちらも、長いほうから数えて、先発投手の上位4分の1に入っている。もっとも、投球の良し悪しとペースに相関関係はない。上原浩治(レッドソックス)を除くと、日本人投手はペースが遅い傾向にある。ダルビッシュは岩隈とほぼ変わらず、田澤純一(レッドソックス)は30秒を超えている。
田中、岩隈、前田の3人は、故障さえなければ、来シーズンも規定投球回に到達できそうだ。20代後半の2人と違い、岩隈は来年4月で36歳だが、球威ではなく制球で勝負するため、身体的な衰えはさほど心配しなくていいだろう。前田に関しても、日本時代の経験があり、他のルーキーに比べれば2年目のジンクスにはまる可能性は低い。さらに来シーズンは、ダルビッシュがトミー・ジョン手術明けのフルシーズン1年目を迎える。2017年は、日本人4投手が揃ってローテーションを守って規定投球回をクリアする、初めてのシーズンになるかもしれない。