【ド軍番米国人記者の眼】前田健太の活躍は予想通り?予想外? 開幕前『スカウティング・レポート』から検証
前田健太のメジャーリーグ1年目の活躍をここまで予測できた米国人記者はいただろうか?開幕前の前田のスカウティング・レポートと今の活躍ぶりを見比べてみた。
2016/07/21
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日本で有効的だったスライダーよりも……
ちなみに、前田は2015年、9イニングで打者わずか1.8にしか四球を与えていないという素晴らしい成績を残していた。多くの人間が、この制球力は米国でも通用するだろうと見ていた。これは、スカウティング・レポートの中でも一定の評価材料とされていたが、前田の与四球率は、アメリカでは上がっている。9イニングで2.67だ。しかし、これでもMLBでは平均値的な数字であり、クオリファイド・ピッチャー96人中50位だ。
前田が評価された最大のポイントは、日本でも米国でも、スライダーの使い方にある。前田は、スライダーを多用するだけでなく(スライダーを投げる確率は31.6%、MLB9位)、カウント、左打者、右打者、関係なく投げている。前田のスライダーに関して後ろ向きに評価しているスカウティング・レポートは1枚もなく、レポートでは、この部分の予測は正しかったようだ。
しかし、数字で見ると、前田のスライダーは彼のベストの球種ではない。対戦相手は、むしろ前田のチェンジアップに苦戦している。対戦相手は前田のチェンジアップに対する打率が.143なのに対し、スライダーに対する打率は.173なのだ。スカウティング・レポートを読み返してみると、前田のチェンジアップを「概ねプラス」と評価しているものもあれば、「確信は持てない」と書いているものもある。前田は、ほぼ左打者に対して、そしてカウントで有利な場合にのみチェンジアップを投げているようなので、おそらく本人の最も好きな球種ではないのかもしれないが、効果的に投げていることは明らかだ。