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ドジャース、いまだ戦力が揃っていない!? 故障者の復帰時期・キーマンとなり得る選手は?【コラム】

2025/03/18

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大谷翔平

読売ジャイアンツとの東京シリーズに「1番・指名打者(DH)」でスタメン出場し、2ランホームランを放つロサンゼルス・ドジャースの大谷翔平選手

 長期離脱からの復帰が注目される投手の中で、最も重要な存在と言えば大谷翔平だろう。2度目の肘手術の影響で、以前のようにフル稼働で圧倒的な成績を残すのは難しいかもしれないが、メジャーリーグの先発投手としてまずまずの結果を期待できるはずだ。
 
 二刀流の「打」の側面では、50本塁打、50盗塁やOPS1.000超えといった華々しい数字が目立つ。しかし、投手としての「投」の能力も一線級だったことを忘れてはならない。
 

 
 ロサンゼルス・エンゼルスで完全な二刀流として活躍を始めた2021年には130イニングを投げて防御率3.18と安定した成績を記録。
 
 翌2022年には規定投球回166イニングに到達し、防御率2.33、奪三振率33.2%(当時リーグ2位、ジャイアンツのカルロス・ロドンに次ぐ)をマークし、ALサイ・ヤング賞投票で4位に名を連ねた。
 
 2023年は肘の故障で9月中旬にシーズンを終えたが、それまでに132イニングを投げ、防御率3.14、1完封を含むエンゼルスのエースとしての役割を果たしていた。
 
 大谷のメジャー初期の球種構成は、フォーシーム5割、スイーパー3割、スプリット2割と、先発投手としてはやや単調だった。しかし、2020年以降は徐々に球種ミックスを変化させ、2021年にはカッターを導入。
 
 2022年にはフォーシーム主体からスイーパー主体へと本格的にスタイルを転換し、シンカーも追加した。大谷のスイーパーは変化量、球速共に優秀で、投球の4割と多く投げているにも関わらず、被打率.146、空振り率36.5%と良い値を記録している。
 
 今後もスイーパーがカギになることに変わりはないが、スイーパーの効力は年々メジャー全体で下がっているため、スイーパーを補強するシンカーやカッターの活用などを始めることになりそうだ。
 
 大谷の際立つ能力の一つは、球速を状況に応じて調整する技術だ。日本人最速165キロのNPB記録を持つ彼は、メジャー移籍後も剛速球を維持し、2023年のフォーシーム最速は101.2マイル(約162.8キロ)に達した。
 
 しかし、常に100マイル超を投げるわけではなく、平均96.8マイル(約155キロ)と最速との差は4.4マイルもあり、この差はメジャーで11位にランクインする。また、得点圏と平常時の球速差は2023年で1.4マイル(ケビン・ゴースマンに次ぐ2位)、2022年でも1.3マイル(4位)と、上位に名を連ねている。
一流投手の球速差
 この力の調整は全盛期のジャスティン・バーランダーや、マックス・シャーザーが体への負担を軽減するために用いていたスキルだ。例えば2009年のバーランダーは球速差がなんと2.4マイルあり、この年240.0イニングを投げた。また2013年のシャーザーは差が1.8マイルあり214.1イニングを投げた。
 
 常に投げて打者を制圧するスタイルが流行する近年では、このような投手は減少傾向にある。そもそも投手のメカニックは最高のパフォーマンスを常に出せるように設計されていることが多く、球速を下げれば負担は減るが、コマンドやスピンにも影響が出てしまう。
 
 故に大谷のこの調整スキルは希少であり、二刀流としての活躍を維持することに一役買っていると言えるだろう。
 
 キャンプ当初は5月頃の復帰とされていた投手大谷だが、3月に入りデーブ・ロバーツ監督は復帰を遅らせる旨の発言をしており、現時点で復帰時期は不透明となっている。
 
 なるべく早期の復帰を期待したいところだが、年単位のブランクがあるためイニング管理にも敏感になるはずだ。6人ローテやブルペンデーなどを活用しつつ負担を抑えた上での、大谷初となるポストシーズンでの登板にも期待したい。

 

 
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