イチロー、3000本安打を支えた打撃フォームの秘訣。オリックス時代の師が語る“振り子打法”と“ルーティン”
メジャー通算3000本安打を記録したイチロー。オリックス時代の監督・コーチは皆、稀有な才能と立ち会えた喜びを口にする。
2016/08/09
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4、5月はアイドリングに徹するルーティン
新井はその頑なさがずっと頭に残っていると言った。当時のイチローはシーズン当初、4、5月は徹底してセンタ-から左方向へ打球を集めた。体に近い球でも、回転で引っ張ることはせず、センターから左へ運んだ。そこまでの徹底ぶりを当初は不思議に感じたという新井だったが、やがてはイチロー流を理解するようになっていった。
「それが長いシーズンを戦うための彼のルーティンなんだと思うようになったんです。自分が良しと思うまでは、車のエンジンでいうアイドリング状態にしておいて、5月が終わったところで、よしアクセル踏むぞって引っ張りを入れて、調子も上げていく。春先に調子が上がらないことが結構あったり、チームとして春先に大きいのが欲しいという時期があってもそうしない。それが1年間を乗り切るための彼のルールだったんでしょう。あそこまで徹することのできる選手はそういないでしょう」
やり抜く強さ、ぶれない強さ、河村は18歳当時のイチローが放っていた空気が忘れられないと語った。
「色白のひょろっとしたまだまだ高校生の見た目なのに、放ってくる空気が違った。俺はこの世界で生きていくんだっていう、ギラギラしたものがありました。そしてグラウンドに足を踏み入れたら、野性的な雰囲気を持った選手で打つも投げるも走るもアグレッシブ。野球に対する絶対的な自信を持っていた。これが18歳かと、多くの場面で思わされたことを覚えています」
同じバットマンとして稀有の才能の開花に立ち会えた喜びを滲ませながら、2人の師は若きイチローとの思い出を語ったものだった。しかし、何よりうれしいことは約20年の時を経て記憶の中のイチローが、いまだ現役プレーヤーとして輝き続けていることなのだろう。