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ドジャース投手陣にも影響!?今シーズンのピッチングに変化をもたらす “投手トレンド”とは【コラム】

2025/04/16

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“球種を増やす“ことのメリットは

 このような変化を象徴するのが、2024年以降に見られる新たなトレンド──「球種を増やす」というアプローチである。このアプローチの利点を、ロサンゼルス・ドジャースの山本由伸を用いて解説する。
 
 山本由伸は投球の約80%をフォーシーム、スプリット、カーブの3球種で構成しており、その投球スタイルは従来の得意球を多く投げるアプローチであった。
 

 
 昨季の山本は、いわゆる“リバーススプリット”と呼ばれるタイプ、すなわち左打者を得意とする右投手であり、右打者に対しては外角高めのフォーシーム、低めへのスプリット、緩急をつけるカーブという組み立てを軸にしていた。
 
 しかし、このアプローチでは打者の内角を攻める手段や、スプリットが決まらない場合の決め球に欠けるという課題が生じる。その解決策として、スライダーとシンカーという2球種の導入が考えられる。
 
 フォームの大幅な改造や球速向上といったハイリスクな選択肢と比べれば、比較的コストパフォーマンスに優れたアプローチだと言える。現実にシーズン途中から山本はこれらの球種を追加した。
球種のアプローチ
 また、新たに加える球種は必ずしも「素晴らしい球」である必要はない。もちろん質が高いに越したことはないが、最も重要なのは「打者にその存在を意識させること」である。
 
 たとえば、スカウティングレポートに「外角フォーシーム/スプリット低め/遅いカーブ」と記されていれば覚えやすいが、「外角フォーシーム/スプリット低め/遅いカーブ/逃げるスライダー/内角シンカー…」といったように情報量が増えれば、打者にとっては対応が格段に難しくなる。
 
 アトランタ・ブレーブスの2年目24歳の投手スペンサー・シュワレンバックは100マイル(約160キロ)のフォーシームや大きく曲がるスイーパーなどの目を見張るような球を持たない。
 
 しかし、6個の平均的な球を駆使することで打者を抑え、既に隠れたサイヤング賞候補とも呼ばれている。

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