将来はキューバにMLB球団誕生も? 米国・キューバ国交正常化による野球界への影響【豊浦彰太郎のMLB on the Web】
アメリカとキューバの国交正常化の米球界への影響は、短期的にはそれほどでもないだろう。しかし、将来は人材の獲得合戦やそれを抑制するポスティング制度導入の可能性もありそうだ。それどころかMLB球団配置も?
2014/12/21
53年間の断行を経て、国交正常化交渉がスタートすることになったアメリカとキューバ。政治的には歴史的な出来事だが、それは両国と日本の野球にとっても同様だろう。日本でも、人材の宝庫であるキューバのトッププレーヤーの動向について様々な憶測が飛び交っているが、アメリカではまだ慎重な見方が多いようだ。MLB機構は、政府の発表を受け以下のような声明を出している。
“Major League Baseball is closely monitoring the White House’s announcement regarding Cuban-American relations. While there are not sufficient details to make a realistic evaluation, we will continue to track this significant issue, and we will keep our Clubs informed if this different direction may impact the manner in which they conduct business on issues related to Cuba.”
MLB機構は、キューバとアメリカの関係に関するホワイトハウスからの発表を見守っていく。今のところ、現実的な評価を下すほどの詳細が明らかではないため、この重要な事案の状況を注視したい。政策転換がキューバ関連ビジネスに影響を与えそうなら、各球団には都度情報を提供する。
正常化は歓迎するがまだ不確定な要素が多く、性急な判断を下せる状況ではないという見方は、他の主要野球メディアも同様のようだ。
ナザニエル・グロウ記者は、12月18日に『ファングラフズ』に掲載した「米国とキューバの国交正常化のMLBへの影響」という記事で、以下のように述べている。
In the long-term, normalized relations with Cuba could potentially result in a significant influx of Cuban talent into U.S. professional baseball, while also opening up other lucrative business opportunities for MLB. In the short-term, however, yesterday’s announcement will likely have little immediate impact on professional baseball in the United States, and if anything, might even temporarily decrease the flow of players defecting to the U.S. from Cuba.
キューバとの国交正常化により、長期的にはキューバ人選手の米球界流入は増加し、MLBにとっての巨大なビジネスの機会が出現するだろう。しかし、昨日の(国交正常化)声明の内容には、短期的には米国のプロ野球にただちに影響を与えそうなものはほとんどない。むしろ、(身体的な危険を伴い、その橋渡しには好ましからざる人物の介在も噂される)キューバから亡命し米国を目指す選手数は、一時的には減少するだろう。
確かに、オバマ大統領の声明はまだ具体性には欠けるものであり、移民規制や貿易規制を消滅させる方向のようだが、実施にはまだ数カ月を要するだろう。したがって、大きな変化がストーブリーグ後半戦に訪れるとは考えがたい。
また、国交正常化がなされた後も、米国に移住する野球選手は少ないのではないか。アメリカ50州と自治領のプエルトリコ、そしてカナダの居住者は、アマチュアドラフトの対象になってしまうからだ。ドラフト経由では、自由競争のFAの場合に比べ契約条件は明らかに抑制される。