上原浩治に続く投手は出るか? MLBのクローザーに必要な〝マネーピッチ〟【広尾晃の「ネタになる記録ばなし」】
ブログ「野球の記録で話したい」を運営中で『プロ野球解説者を解説する』(イーストプレス刊)の著者でもある広尾晃氏。当WEBサイトでは、MLBとNPBの記録をテーマに、週2回、野球ファンがいつもと違う視点で野球を楽しめるコラムを提供していく。今回はMLBのクローザーについてだ。
2014/12/22
多種多様な守護神たち
プロ野球の投手は先発(スターター)と救援(リリーバー)の2種類に大別されるが、一般的にリリーバーの中でも最も優秀な投手が担うのがクローザーというポジションだ。
クローザーは最終回、味方がリードをした局面に登場する。大差がついた状況では出てこない。3点差以内、ワンチャンスで勝敗がひっくり返るような接戦に登場し、チームを勝利に導く。
クローザーへのご褒美は「セーブポイント」だ。勝敗とは別に、特別の数字が記録される。近代野球において、クローザーは最も重要なポジションの一つだと言えよう。
発祥の地、アメリカでのクローザーとはどんな仕事なのか、今回は数字にこだわって見てみよう。
2014年、MLBのセーブ数30傑だ。表内の最高値は赤色で示した。
クローザーは原則として各チーム1人だから、代表的なクローザーはほぼ入ったランキングとなる。
セーブ数1位はシアトル・マリナーズのフェルナンド・ロドニー、無事に抑えると腕を空に向かって突き上げる独特のポーズをとることで有名だ。
しかしながら、ロドニーを現在、最高のクローザーだと評価する人は少ない。点を取られても追いつかれなければセーブがつく。
ロドニーはきわどいセーブがかなり多いからだ。
本当にすごいクローザーはマウンドに上がっただけで「奴がでてきたらだめだ」と敵チームが思うような絶対的な存在だ。
今、そういう存在だとされているのが、アトランタ・ブレーブスのクレイグ・キンブレル。180cmと標準的な体だが、160キロ近いホップするような速球と高速カーブのふたつだけで打者を切って捨てる。被打率は.142、全盛期の藤川球児を思わせる小気味の良い投手だ。
ボルチモア・オリオールズの左腕ザック・ブリットンは、今年突然制球力が良くなり、打たせてアウトをとる名人に変身した。1回当たりの投球数13.79球。あっという間に打者を片付けてマウンドをおりてくる。
シンシナティ・レッズのアロルディス・チャップマンは人類最速の170km/hの速球で圧倒する。スライダーも投げるが、そのスライダーでさえも145キロ。2009年のWBCにはキューバ代表で出場し、日本チームのいやらしい小技に頭に血が上って攻略されたが、今は絶対的な存在だ。
30人の中で最高齢が39歳、ボストン・レッドソックスの上原浩治。今年の後半はやや不振だったが、調子が良いとほとんど安打を打たれず、四球も出さない完ぺきな投球をした。各種のSTATSは、この顔ぶれの中でも上位につけている。
クローザー30人の平均値は64試合に登板し、1000球を投げて、32セーブという数字になる。
NPBのクローザー20人の平均値が51試合に登板し、750球を投げて18セーブだから、過酷さが違うのがわかるだろう。
中日ドラゴンズの森繁和ヘッドコーチに解説者時代、クローザーについてお話を伺ったことがある。「救援投手はベンチに座るたびに消耗するんだ」と言っておられた。「ベンチに座る」とは、登板を終えることを意味する。投球数は先発投手の1/3に過ぎないが、疲労度は登板数に伴って増していくのだ。