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過酷な生き残りレース。MLBの「新人王」を獲得した選手たちの〝その後〟【広尾晃の「ネタになる記録ばなし」】

ブログ「野球の記録で話したい」を運営中で『プロ野球解説者を解説する』(イーストプレス刊)の著者でもある広尾晃氏。当WEBサイトでは、MLBとNPBの記録をテーマに、週2回、野球ファンがいつもと違う視点で野球を楽しめるコラムを提供していく。今回のテーマは、MLBの新人王を獲得した選手の2年目以降の成績についてだ。MLBで生き残ることがいかに難しいかを物語っている。

2015/01/05

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新人王に輝いたあと、順風満帆な野球人生を歩めた選手はごくわずか

「新人王」はプロ野球選手にとって一生に一度の栄誉だ。
 MLBではROY(ルーキー・オブ・ザ・イヤー)という。1947年に制定された。最初の新人王があの「42」のジャッキー・ロビンソンだったために、ジャッキー・ロビンソン賞の異名がある。記者による投票で決定する。
 
 新人王はその年一番活躍した「新人」に与えられるが、「新人」の規定はゆるやかだ。
打者は130打数以内、投手は投球回数50回以内、MLBの25人枠への在籍期間が45日以内。その期間内なら1年目だけでなく、何年目でもいい。
 
 それでは過去20年間の新人王と、その成績、通算成績を見てみよう。
 
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 アナ両リーグで40人の新人王が生まれたが、その後の野球人生はまちまちだ。新人王を獲ったからと言って、将来が約束されたわけでは決してない。
 
 95年の新人王は野茂英雄。アトランタ・ブレーブスのチッパー・ジョーンズと激しい争いとなり野茂が118ポイントで104ポイントのジョーンズを下した。
 日本人、NPB出身の新人王はもちろん初の快挙だった。
 野茂はその後123の勝ち星を積み上げた。意外なことに、野茂以降の投手の新人王で100勝したのは現役のジャンスティン・バーランダーだけ。新人から順調に成績を維持する選手は少ないのだ。
 
 翌年のアメリカン・リーグの新人王がデレク・ジーター。ヤンキースに新しいスターが誕生した、と大々的に報じられたのを覚えている。
 99年のカルロス・ベルトランは、メッツなどで活躍した。長打に加えて俊足、最強打者の一人だった。今はヤンキースにいる。
 
 2000年は佐々木主浩。救援投手として受賞した。MLB在籍はわずか4年ながら、この間に129セーブも挙げている。満了前に契約を破棄してNPBに復帰した。
 
 イチローはまさに破天荒。新人で主要打撃タイトルに輝いたのは1964年以来で、しかもMVPも受賞。これは史上初。新人の最多安打記録も破り、文字通り記録尽くしの新人だった。
 イチローは14年目を終えて通算打率.317、安打数も2844本。新人王に輝いてからも、毎年活躍しつづけた。イチローは並み居る新人王の中でも「超一級」といえよう。
 
 同年のナリーグのアルバート・プホルズもここまで520本塁打を打ち、イチローとともに21世紀のMLBをけん引した。
 その後の歴代新人王を見てみると、成績はまちまちだ。
 新人王の取得年がキャリアハイになってしまった選手も多い。フロックだったということになるだろう。
 
 クリス・コグランは、新人王の年に交流戦でレイズの岩村明憲と二塁で交錯。岩村に十字靭帯損傷の大怪我をさせた。怪我以降、岩村は成績が急降下し、NPB復帰後も復活することなく昨年限りでヤクルトを退団した。コグランはハッスルプレーで新人王を獲得したが、結局レギュラーに定着せず、今季はまだFA状態だ。
 
 2010年代に入ると、大物新人が多数出るようになった。
 バスター・ポージーは強打の捕手。新人王の翌年、本塁でのクロスプレーで大怪我をしたが、その翌年には首位打者を取っている。
 
 クレイグ・キンブレルは160km/hオーバーの速球が売り物。新人でセーブ王を獲得、受賞後4年連続でタイトルを維持している。最も攻略しにくいクローザーの一人だ。
 マイク・トラウトは新人でイチロー以来の盗塁王を獲得した。高打率、長打に加えて出塁率も抜群で2014年、ついにMVPを受賞した。
 
 イチローのあとは、日本人の新人王は出ていない。
 松井秀喜やダルビッシュの時には「彼は新人ではない。NPBで十分に実績を積んでいる。他国で実績のある選手には新人王の資格はない」という意見が出た。
 
 しかし今季のアメリカン・リーグは、キューバリーグで大選手になっていたホセ・アブレイユが受賞。新人王の「資格」をめぐる議論にはまだ決着がついていない。

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