大事なのは速球の活かし方 人類最速171キロの剛速球だけで、MLBは通用せず【広尾晃の「ネタになる記録ばなし」】
ブログ「野球の記録で話したい」を運営中で『プロ野球解説者を解説する』(イーストプレス刊)の著者でもある広尾晃氏。当WEBサイトでは、MLBとNPBの記録をテーマに、週2回、野球ファンがいつもと違う視点で野球を楽しめるコラムを提供していく。今回のテーマは、2014年のフォーシーム(ストレート)の平均球速のランキングから、MLBで通用する選手について考えてみた。
2015/01/12
Getty Images
MLBでは100マイルの球を投げる投手は一握りではない
MLBの試合を見ていると、いろいろな違いに気が付くが、その最たるものは「球速の違い」だろう。
MLBでは無名の選手でも96マイル(154.49キロ)位の球は普通に投げる。さすがに100マイル(160.63キロ)の球を投げる投手は限られているものの、それでも一握りと言うわけではない。
昔からNPBとMLBの最大の違いは「スピードとパワー」だと言われている。
それは今も変わらないのだろう。
『Baseballprospectus』というセイバー・メトリクスの専門サイトは、MLBの投手の球種別の平均球速を発表している。
このデータをもとに、2014年のフォーシーム(ストレート)の平均球速のランキングを作った。
フォーシームを200球以上投げた343人のランキングから上位50人と、日本人投手、気になる投手。勝敗、セーブ、防御率をつけた。
表のSPは先発投手、RPは救援投手、CLはクローザーだ。
1位はシンシナティ・レッズのクローザー、アロルディス・チャップマン。人類最速の106マイル(171キロ)を投げる投手として知られる。左腕。体をぐっと折り曲げ、ややスリークオーター気味から猛烈な速球を投げる。
キューバ出身、2009年のWBCでは、〝100マイルを投げる秘密兵器〟と言われた。しかし、日本代表との試合では「ひたすら粘る」「バントで揺さぶる」作戦にじらされて自滅してした。
そんなチャップマンも今はレッズ不動のクローザーだ。剛速球に加えて144キロの高速スライダーも投げる。打てるはずがないと思ってしまう。
2位のヘレーラは、ドミニカ出身の25歳の救援投手でロイヤルズの生え抜きだ。2013年までは制球が甘く、58.1回で被本塁打は9本を数えたが、今季は0本だった。
ベスト10のうち9人はクローザーも含めた救援投手だ。1イニング、15球~20球を投げる救援投手と、6イニング100球程度を投げることが求められる先発投手では、力の配分が違うのだ。
その中で同じくロイヤルズのヨルダノ・ベンチュラは183回を投げる本格的な先発投手ながら、158.13キロの平均球速を誇る。彼もドミニカ出身だ。まだ2年目、怖いもの知らずと言う感がある。
8位のブレーブスのキンブレルはこのコラムでも何度か紹介している。MLBで最も攻略が難しいクローザーとされる。平均158キロのフォーシームもさることながら、140キロの球速で激しく曲がり落ちるカーブで打者を退ける。キンブレルのカーブは、ナックルの握りで投げるナックルカーブ。MLBのカーブの球速では2位にランキングされている。