大事なのは速球の活かし方 人類最速171キロの剛速球だけで、MLBは通用せず【広尾晃の「ネタになる記録ばなし」】
ブログ「野球の記録で話したい」を運営中で『プロ野球解説者を解説する』(イーストプレス刊)の著者でもある広尾晃氏。当WEBサイトでは、MLBとNPBの記録をテーマに、週2回、野球ファンがいつもと違う視点で野球を楽しめるコラムを提供していく。今回のテーマは、2014年のフォーシーム(ストレート)の平均球速のランキングから、MLBで通用する選手について考えてみた。
2015/01/12
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剛速球だけで相手を抑えられるほど、MLBは甘くない
こうしてランキングを見ていると、4点台、5点台と防御率が良くない投手も散見される。速い球を持っているだけで世渡りができるほど、MLBは甘い世界ではないのだ。
今、MLB最高の投手とされるクレイトン・カーショウはこのランキングでは143位。速球に頼るのではなく、変化球が鋭く、制球も抜群だから好成績を上げることができる。
日本人投手ではレッドソックスの田澤純一が一番速いとされる。田澤は伸びる速球とフォークというシンプルなコンビネーションで実績を積んできた。強気の投球が身上だ。
2009年8月7日のヤンキースとのデビュー戦では、延長15回裏にアレックス・ロドリゲスと対戦し、内角を攻めた速球をライナーで左中間にサヨナラ本塁打された。
それから5シーズン、今やレッドソックスの頼れるセットアッパーだ。
最高速だけでいえば、日本人最速は158キロを投げるダルビッシュ有だと思われる。そのダルビッシュはフォーシームよりもツーシームのほうが速い。そのために日本人2位に甘んじている。
上原浩治は、速球の平均球速では下から12番目の遅さだが、抜群の制球力に加え、何種類もあるスプリッターを投げてクローザーの役割を見事に果たしている。
他の日本人投手も、フォーシームの速さではランキングは下だが、田中将大、黒田博樹、岩隈久志ら好成績を残している。MLBで生き残るのは、決して〝速さ〟だけではない。それを体現している。
最下位はトロント・ブルージェイズの先発ディッキー。この投手は現役ではほとんど唯一のナックルボーラー。予測不能な魔球を武器とするディッキーにとって、速球は目くらましに過ぎない。この程度の速さでも十分に通用するのだ。