「三振か本塁打か」魅力的な記録を持つアダム・ダン 通算462本塁打の大砲が残した軌跡
アダム・ダンが現役引退を発表した。圧倒的なパワーとあまりにも多い三振で日本のファンからも大いに愛された稀代の大砲の14年間の軌跡を5つのキーワードから振り返る。
2015/01/17
Getty Images
14年間すべてのシーズンで、安打数よりも三振数が上回る
今月12日、アダム・ダンの代理人であるブライアン・ピータース氏が同選手の引退を認めた。夏ごろから2014年シーズン限りでの引退を示唆していたダンだが、これで正式に14年間の現役生活に幕が下りることになる。通算462本塁打の類まれなパワーと毎年200を超える三振を喫した丁半博打のようなバッティングで日本でも多くのファンに愛されたアダム・ダン。以下の5つのキーワードからその軌跡を振り返ってみよう。
1.メジャーデビュー、通算462本塁打
1998年のドラフトでレッズに全体50位で指名されてプロ入り。当初はアメフトとの二足のわらじを履いていたが下級生の台頭によりQBからタイトエンドへコンバートされたことでアメフトを諦め野球に道を絞った。
2001年7月にメジャーデビュー。そこから66試合の出場ながら19本塁打を放つ活躍で新人王投票でも4位に入った。2004年には自己最多の46本塁打、195三振に加えて球団史上2人目となる100打点・100得点・100四球を記録して大ブレイク。その年から2008年まで5年連続40本塁打を放つなどメジャー屈指の長距離砲として活躍し、14年間の現役生活でのべ5球団に在籍し通算462本塁打を記録した。
通算.237の低打率ながら.367の高出塁率、相手野手が仕事をしない打席(本塁打、三振、四球)が全打席の半分を占めるなど残してきた成績は非常に風変わりなものが多い。
通算14年:2001試合 打率.237 (6883-1631) 462本塁打 1168打点 2379三振 1317四球 出塁率.367 OPS.854
2.三振
アダム・ダンと言えば欠かせないのが三振。フリースインガーではないが好球が来るまでじっくりボールを見ていくスタイルゆえ四球とともに非常に三振が多い。
三振関連の記録には事欠かなく、主なものだけでも歴代3位の2379三振、歴代最速の12年で2000三振に到達、後述する2012年には歴代2位のシーズン222三振、14年間すべての年で三振>安打を記録、66試合に終わった新人年以外はすべての年で3桁三振、野手最多の36試合連続三振、シーズン三振160以上を11回記録などがある。
三振と四球の多さと併せて低打率,高出塁率、40本塁打を打てるパワー、鈍足、ド下手な守備と全盛期には〝イチローの対極にいる選手〟と称されていた。
3.悪夢の2011年、復活の2012年
「早く忘れたい」本人もそう語った11年はダンにとって悪夢のような年だった。4年5600万ドルの長期契約を結んだ1年目、490打席以上ではメジャー史上最低となる打率.159に打率を上回る177三振、それまで7年連続38本以上打ってきた本塁打も11本に終わった。これではESPNのLVP(リーグで最も価値のない選手)に選ばれたのも当然だ。
しかし翌2012年シーズンには見事復活。6年ぶりとなる40本塁打に加え、シーズン最多にあと1つと迫る222三振(最終戦を監督の温情で欠場して記録更新は回避)、リーグ最多の105四球と見事にダンらしさを取り戻し400本塁打、2000打点のマイルストーンも達成した。この年は単打(50本)よりも長打(60本)のほうが多いなど数多くの珍記録を達成し11年に続き2年連続でESPNの最優秀珍記録選手に選ばれている。