有力オリオールズ一転、厳しいマーリンズへ。『待つ』のをやめ、現実的な選択を選んだイチロー
イチローはなぜ、マーリンズを選択したのか? それは、『待ちつづけた』結果、逆にメジャー契約の道すら閉じてしまう最悪なシナリオを回避した、イチロー側の現実的な選択肢と言えるのではないだろうか?
2015/01/26
Getty Images
DH制のないナリーグでは、出場機会がさらに激減
待つ、という選択肢もあっただろう。オリオールズがイチロー獲得へ、本腰を入れてくるのを待つのも一つ。キャンプインに、無理に合わせないのも手だ。キャンプ、オープン戦と実戦が続けば、外野のレギュラーにケガ人が出る可能性はある。そこを期待して、キャンプイン後にメジャー契約を狙うFA選手も、メジャーではよく見られるケースだ。
誤算もあった。オリオールズではイチロー獲得へ熱心とされていたダン・デュケット編成本部長が、ブルージェイズの球団社長に就任するのでは、とここ数日米メディアでは大騒ぎ。正右翼手が不在で、積極的だったはずのオリオールズだが、浮上した球団首脳の移籍話で今後の計算が全く立たなくなっていた。
ケガ人を待つ、というのも不確実で、何とも頼りないスタンスなのも事実。そうこうしているうちに、各球団の控え外野手のメジャー契約のポジションさえ埋まってしまい、マイナー契約の招待選手としてキャンプ参加となれば、それこそ最悪のシナリオだ。
2月下旬のキャンプインが迫る中、現状で最も現実的な選択肢が、控えとしてのマーリンズ入団だったわけだ。
DH制のないナリーグ球団に移り、先発での出場機会は激減する。ヤンキースでの昨季も同じ第4の外野手という扱いだったが、正外野手のベルトラン、ソリアーノが故障がちだったこともあり、95試合に先発出場し、102安打を放った。
だがマーリンズの布陣では、投手の打席などでの代打起用が増えるのが関の山だ。実際、ベンチに座る控えの左打者は少ない。
安打数が昨季以上に減ることは濃厚。あと156本に迫るメジャー通算3000安打はもちろん、日米通算であと134本で並ぶピート・ローズ氏の史上最多4256安打にも今季中は届かないだろう。
当然、控えとして1年契約を終える来オフには、さらなる苦境が待ち構えている。メジャー契約を勝ち取るために、数字を残すチャンスが激減するからだ。
代打中心の起用の中でも、抜群のバットコントロールと集中力を発揮して存在感をアピールできるか。
また記念碑となる3000安打という大記録達成が間近に迫れば、それをアシストしようという球団が現れる可能性もある。マーリンズの球団公式サイトは、記録が近付けば16年シーズンまでの契約延長を用意するかもしれないと伝えている。
一時は到達間違いなしと言われていたメジャー3000安打。そして前人未踏のピート・ローズ超え。イチローのキャリアの、ハイライトとなるはずだった。いずれにしても、2つのマイルストーン踏破へ、正念場を迎える1年になる。