マンフレッド新コミッショナー「極端な守備シフト禁止」を示唆 発言に隠された、セルフプロデュース戦略【豊浦彰太郎の Ball Game Biz】
マンフレッド新コミッショナーは「極端なシフト禁止」などの改善案を提案している。それは野球本来の魅力への憧憬だけでなく、稀代の名コミッショナーの後任という十字架の元での自己PR戦略でもあるのではないか。
2015/01/28
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守備シフトに制約。新コミッショナーの発言意図
MLB第10代コミッショナーに就任したロブ・マンフレッドは、昨季激増した極端な守備シフトに制約を加える可能性を示唆した。そこには、新コミッショナーのベースボールへの愛と、ビジネスマンとしてのセルフプロデュース戦略が垣間見える。
昨季、打者の特徴に応じて極端に内野陣がポジショニングを変えるシフトが目立った。それらは、詳細なデータ解析に基づく戦術で、セイバー的には効果が立証されている。中には8月29日のパドレス戦でのドジャースのように、サヨナラ負けを喫しかねない場面で、一二塁間に三塁手を除く内野手3人と中堅手をあわせて4人を配したケースもあった。
このような傾向には伝統を重んじるファンを中心に反発もあった。曰く、「本来、野手の配置は長い歴史を経て攻撃側と守備側の絶妙なバランスになるよう行き着いたものだ」曰く、「二塁ベースの右側で捕ったのに三塁ゴロなんて」というわけだ。
実は、マンフレッドの案はそれほどラディカルなものではなく、例えば「内野の右半分、左半分に配置する野手の数を制限する」というくらいものだ。
私見を述べさせてもらうと、このような制限には反対だ。現代の打撃理論は、このようなシフトの存在を前提としていない。だから、野手がシフトを敷いても自分の打撃スタイルを崩すべきではないとの考えで、多くの打者は引っ張りを止めようとしない。
しかし、この状況が続くと、きっと将来理想の打者像やあるべき打撃理論は変貌する。現在よりも広範囲に打ち分けるスプレーヒッティングが、成功するための必須条件となるのではないだろうか。ちょうど、マネーボール理論の普及とともに、以前は軽視されていた四球を選ぶ能力が見直されたように。
そうなると、今度は守備側のポジショニングに関する研究もさらに進み、一見それほど極端ではない、でも実に深い分析に基づいた野手の配置が採られるのではないか。これこそベースボールの進化だと思うのだ。
話をマンフレッドに戻す。ここでの主旨は、守備におけるセイバー理論を展開することではない。