「応援は乞わない、応援される選手であり続けるよう努める」イチローの真髄【豊浦彰太郎のMLB on the Web】
29日、イチローのマイアミ・マーリンズの入団会見が東京で行われた。『MLB.com』に掲載されているが、イチローの真意が伝わっていないように思われる。
2015/01/30
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生き方が個性的なイチロー
2009年のことだったが、イチローは首位打者をツインズのマウアーと競っていた。ある記者が「今日のマウアーの成績が気になるか」と聞いたところ、「全く気にしない。自分のコントロール外のことだから」と答えた。
全く正しいと思う。タイトルとは、ライバルとの相関関係によって決まる。.330で首位打者になれることもあれば、.350でもダメな時もある。
制御不能な相手の成績を気にするより、自分がやるべきこと、できることに集中したほうが遥かに生産的だし、無駄なストレスも少ない。この年、イチローは.352だったが、マウアーはその上をいく.365。結果的にタイトルを手にすることはできなかった。
しかし、自らの事をやりきったイチローに後悔の念は少なかったのではないか。
2013年に日米通算4000本安打を達成した際は、「4000のヒットを打つには、僕の数字で言うと、8000回以上は悔しい思いをしてきている。それと常に、自分なりに向き合ってきたことの事実はあるので、誇れるとしたらそこじゃないかと思いますね」というこれぞプロ中のプロだと感じさせる発言をした。
紋切り型のコメントを発することしかできない選手とはモノが違うと思う。
イチローの魅力は?と聞かれ、「打ってよし、守ってよし、走ってよし」と答えることもできるが、「選手として素晴らしい」「ルックスがカッコいい」「生き方が個性的だ」と思っている。そして、その個性的な生き方の1つが、メディアやファンに媚びないこと、だと思っている。
これは世代もあるかもしれない。
野球選手も芸能界のスターも憧れながら遠巻きに眺める時代に育った人間にとっては、ファンサービスは大事だと認識しながら、「応援お願いしまーす!」とか「明日も球場に来てくださーい」と叫ぶ若い選手に戸惑いも感じている。
その点、応援を乞うより応援される選手であるように努めると、自責で考える孤高のイチローはやっぱりすごいと思う。
出典 “Ichiro ‘humbled’ by Marlins’ efforts” @ MLB.com by Chad Thornburg in Jan. 29, 2014