年齢、レギュラー争い、環境、記録……戦う相手は数知れず。野球人・イチローをつくりあげてきた“挑戦”という道程
異例ずくめのVIP待遇だった。それだけマーリンズがイチローを評価している証でもある。そして、イチローは今年も『応援していただけるような選手』でありつづけるために、新しい挑戦に向かう。
2015/02/02
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入団するための条件が、すべてクリアになった
まだ1月。この時期にシーズンの話を展望するのはナンセンス。そう言わんばかりに、冗談で切り返してみせた。ここまでだって、数々の不可能と思われたミッションをクリアしてきた。
そして、41歳のベテランの心を動かしたのは獲得へ向けた球団の熱意。「球団のやたらに熱い思いが伝わってきた。この2年間欲していたものは、これだったんじゃないかと思います」と語った。
敬意を払うかのように、入団会見は日本国内で行われた。球団社長、GM、編成本部長ら球団幹部が5人も来日。医療スタッフ2人まで同行し、メディカルチェックも日本で行われたという。
異例ずくめのVIP待遇。イチローは会見の冒頭を「ただただ恐縮しております。この機会を日本で実現できるということは、通常あり得ないと認識しています」と切り出したほどだ。
ヤンキースでの13、14年シーズンは、戦力として期待される立場にいなかった。ちょうど1年前。日米メディアは総じて、余剰戦力となったイチローは開幕前にトレードで放出される、と信じ込んでいた。
「選手として必要としてもらえる。これが僕にとっては何よりも大切で、大きな原動力になると思います」とイチローはすっきりした表情で前を見据えた。
「(入団に)マイナスの要素を挙げて、それをクリアできるか考えた。細かく言えば背番号(51)だったり、ウエートマシーンを置けるスペースがあるかとか…」
代理人を通じて交渉を持ちかけられた中で、自分の中で条件を整理していったという。
「全部クリアしちゃったんですよね。それが全てクリアになった。そうすると、この話に対してノーという理由がなくなった」
消去法で丁寧に一つずつ条件を絞っていき、決断に到った。