格差是正で“儲かる仕組み”が進化 「量」から「質」へと転換したMLBの球団ビジネス【広尾晃の「ネタになる記録ばなし」】
ブログ「野球の記録で話したい」を運営中で『プロ野球解説者を解説する』(イーストプレス刊)の著者でもある広尾晃氏。当WEBサイトでは、MLBとNPBの記録をテーマに、週2回、野球ファンがいつもと違う視点で野球を楽しめるコラムを提供していく。今回は、MLBセリグ前コミッショナーが築いた「ビジネスモデル」についてだ。
2015/02/02
弱小球団の経営改善を推進
実は、この10年でもMLB全体の収益性は改善しているのだ。
それを端的に表しているのが、観客動員数最下位の球団の動員数。2004年の再下位球団は100万人を割っていた。これではどうあがいても赤字である。
しかし2014年の最下位、インディアンスは143.7万人も動員している。平均すればほぼ2万人。これなら採算ラインに乗る。
2004年最下位のモントリオール・エクスポズはこの年に財政難に陥り、セリグコミッショナーの決断で翌年からMLB機構の管理下に入った。
そこで経営改善を行い、新たなフランチャイズであるワシントンに移転し、ワシントン・ナショナルズになった。
今やこのチームはナリーグ東地区の優勝候補になっている。
セリグは、リーグ、MLB全体の繁栄のために、弱小球団の経営改善を進めた。またMLBの収益の中から各球団に分配金を配布した。経済格差を埋めて、戦力均衡を図ったのだ。
これは、観客動員率を見ればさらによくわかる。
96年のMLBの平均観客動員率は49.3%、およそ半分。これが18年後には70%弱になった。
観客動員率最下位の球団は、かつて20%程度しかお客を呼ぶことができなかった。
20%といえば、がらがらである。「野球の最高峰のステージ」とはお世辞ながら呼べない。昨年のインディアンスの40%も寂しい数字ではあるものの、全体の底上げはできているのだ。
観客動員数、動員率の数字を見ると、やはりその時代の強豪チームが上位に来ていることもわかる。
1996年にわずか24.7%しか観客席を埋めることができなかったサンフランシスコ・ジャイアンツは、ワールド・チャンピオンになった昨年はなんと99.9%、立錐の余地もない大入りを続けたのだ。