ナリーグDH制採用の可能性も? 投手の打席排除がMLB魅力アップにつながるのか【豊浦彰太郎の MLB on the Web】
新コミッショナーの「野球をより魅力的に」との掛け声のもと、ナリーグでのDH制採用が検討されるかもしれない。もし採用されれば、打撃戦は増えるかもしれないが、投手を打席から完全に排除することが魅力アップにつながるかは疑問だ。
2015/02/03
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投手の中から”大打者”消滅も
筆者は「ゲームをより打撃戦が多いものに」ということに異論はない。しかしDH制の両リーグでの採用には反対だ。「打撃優位に」というのは「より面白く」ということを意図しているわけだが、投手が打席に入らなくなることは、ある種の面白さを排除してしまうからだ。
MLBの投手は結果的に打力が野手に劣るだけで、原則として「なんとか打って出塁してやろう」という意識を持っている。
ナリーグの投手は、結果はともかく打撃に対する意思は一般の野手と大きな差はない。その結果、世界一ジャイアンツのエースのマディソン・バンガーナーのような「大打者」も出てくる。彼は、昨季グランドスラムを含む4本塁打を放ち、OPSは野手顔負けの.755だった。
また、2000年代に活躍したカルロス・ザンブラーノは通算24本塁打をカっ飛ばしているし、1999年のナリーグの最多勝(22勝)投手マイク・ハンプトンは打率.311でOPS.806だった。
ここに例として挙げたのはもちろん一部のエリート。それでも彼ら以外でも多くの投手は「やる気満々」で、彼らが打席に立つ姿が見れなくなるのはゲームの楽しみの一つが奪われてしまうことでもある。「ハナっから打つ気なし」と「結果として打力に劣る」ことは同じではない。
DH制そのものを否定する気はさらさらない。しかし、アリーグがDH制である以上、「もうひとつの(そして本来の)野球の姿」を維持することは大いに意義がある。DH制の有無という2つのシステムを維持することは「打撃優位に」には結びつかずとも、マンフレッド・コミッショナーが標榜する「ゲームそのものをより魅力的に」という究極の目標で反するものではないと思う。
出典:”It’s time to make designated hitter universal in baseball” @ The Boston Globe by Nock Cafardo in Feb. 1st 2015