【MLB】ダルビッシュ有が史上最高投手である理由。常識を超えたすごさ、サイヤング賞も視野に【小宮山悟の眼】
23日のカンザスシティー・ロイヤルズ戦で8回1失点と好投し2勝目を挙げた、テキサス・レンジャーズのダルビッシュ有投手。速球と変化球を自在に操り、打者を抑え込む姿に、投手最高の称号でもあるサイ・ヤング賞獲得を現実的に臨む声も多いだろう。右肘のトミー・ジョン手術から復帰して2年目のシーズン、凄みを増したダルビッシュはどんな輝きを見せてくれるのだろうか。
2017/04/29
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コンスタントに7回を投げられるように
ダルビッシュは100マイルを投げるにもかかわらず、変化球投手なのだ。こんな投手、他にはいないだろう。スライダーが一番よくて、つぎにカーブ。前回の試合でキレていたのがチェンジアップ。今シーズンは、スプリッターは投げていないが、今後、投げる機会もあるはずだ。
彼にとって大事になってくるのはいかにフラットな状態で投げられるかだろう。
前回登板では8回を投げたが、正直に言うと7回でいい。コンスタントに7回を投げるようにしたほうがいいだろう。ダルビッシュの悪い癖は、時に大崩れしてしまうところだ。8回を投げる試合が少なくなってもいいから、崩れないでフラットに7回を投げ続けることを意識して欲しい。
いつどんな状況で投げても、同じような結果を出し続ける。これができるようになれば、自分を自由自在にコントロールできるということになる。つまり、サイ・ヤング賞に近づくピッチャーになれる。
日本では完封や完投することが先発投手の美徳されているところがある。
それはもう古い話だ。先日も巨人の菅野智之が完封していたが、あの試合は裏を返せば、それだけ後ろで投げる投手が信用できないということだ。アメリカではそういうことはない。連投が続いているときは別として、後ろで投げる投手からすれば「俺の仕事を奪うな」ということになるのだ。先発投手は7回までを投げるのが仕事になり、8回にセットアッパー、9回にクローザーにバトンを渡していく。
ダルビッシュは1~7回までコンスタントに115球前後で抑えるピッチングを繰り返していけば、シーズン200イニングを超えることができるはずだろう。アメリカン・リーグで防御率2点台という成績を残すことになれば、リーグ屈指の投手ということになる。彼には来季からの契約の問題があるから、ビッグコントラクト(契約)になるはずだ。
彼はマウンド上でバタバタする姿を見せないようにすることを大前提で投げているが、課題は思うようにコントロールできなかったときに、そのストレスの状態を見せてしまうところがある。彼自身は無意識なのだが、グラブの中の捕球面に拳を叩きつける動作をする時がある。
自分の思うようにいかなかったときは、瞬時になぜそうなったかを考えるものだが、グラブを叩く動作が出るということは、「くそー!」という気持ちが出ているからだろう。なんでミスが起きたんだと冷静に考えるようになれば、もっと変わってくると思う。
これからどんなピッチングを見せてくれるのか。各球団がメジャー屈指の投手であると評価しているのは間違いない。その中で“100マイルを叩き出す変化球投手”という史上最高の称号をモノにして、サイ・ヤング賞を狙ってほしい。
小宮山悟(こみやま・さとる)
1965年、千葉県生まれ。早稲田大学を経て、89年ドラフト1位でロッテ・オリオンズ(現千葉ロッテマリーンズ)へ入団。精度の高い制球力を武器に1年目から先発ローテーション入りを果たすと、以降、千葉ロッテのエースとして活躍した。00年、横浜ベイスターズ(現横浜DeNAベイスターズ)へ移籍。02年はボビー・バレンタイン監督率いるニューヨーク・メッツでプレーした。04年に古巣・千葉ロッテへ復帰、09年に現役を引退した。現在は、野球解説者、野球評論家、Jリーグの理事も務める。