「先にマウンドを降りたくない」。ダルビッシュ有と田中将大のMLB史に残る熱戦が生んだ相乗効果とは【小宮山悟の眼】
ヤンキースの田中将大投手とレンジャーズのダルビッシュ有投手は、メジャー初対決でともに無失点、2人で計19三振を奪う息詰まる投手戦を繰り広げた。球史に残る名勝負を演じた2人の対決は、どんな相乗効果を生んだのか。
2017/06/28
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旧知の仲だからこそ高まる集中力
当人同士は、今回の対決を楽しみにしていたはずだ。周りの人間の期待感たるや相当なものだったと思うし、日本でどんな風に扱われるかもわかっている。これ以上にないテンションで試合に臨んだことだろう。試合開始が1時間40分遅れ、雨の中という悪条件での投げ合いだったにもかかわらず、最高のピッチングをみせられたのは相手がいてこそだ。
田中は集中力を持って投げれば、これだけの投球ができるというのを改めて実感することができたと思う。私はここ数試合の田中が打たれている試合をみていても、全然問題ないと言い続けてきた。打たれるには原因があり、それさえ改善できればと思っていたからだ。それをダルビッシュとの投げ合いでつかんだということだ。
これまでの田中は気の抜けたボールが多かった。つまり、「何となく投げている」というボールが多すぎたのだ。もちろん、本人は集中して投げていると思うが、ダルビッシュとの投げ合いがこれまでと同じテンションだったかというと、決してそうじゃない。
全試合にその集中力で臨むのは難しいが、それほどの気持ちで臨まなければ打たれてしまうというのがメジャーリーグなのだ。高い集中力で投げる試合が多くなると、投手として一つ二つ上のランクになれるということだ。今まで以上の集中力が生まれ、打者を抑えることができたということが、田中の今後にとっていいものさしになるはずだ。