「先にマウンドを降りたくない」。ダルビッシュ有と田中将大のMLB史に残る熱戦が生んだ相乗効果とは【小宮山悟の眼】
ヤンキースの田中将大投手とレンジャーズのダルビッシュ有投手は、メジャー初対決でともに無失点、2人で計19三振を奪う息詰まる投手戦を繰り広げた。球史に残る名勝負を演じた2人の対決は、どんな相乗効果を生んだのか。
2017/06/28
Getty Images
“器用さ”はダルに軍配
一方のダルビッシュは、すべてのボールを駆使して抑えるというピッチングができていた。遅いボールを要所で使って緩急をつけ、最大の武器であるスライダーにキレがあった。ストレートも低めに集めることができていて、見事なピッチングだった。
ダルビッシュが田中より勝っているのは“器用さ”だ。しかし、時に器用貧乏になりすぎるきらいがあり、「抑えられたのにもったいない」と思うことがダルビッシュには多い。そういう意味では田中との投げ合いで、器用さが裏目に出ることがなかったのが良かった。田中とは年間を通して連絡を取り合う仲のため、いつも通りに投げつつも、研ぎ澄まされていた。田中に対して凄さを見せつけているようにみえたピッチングだった。
そんな2人の投げ合いには、日本の野球界のほとんどが注目していたはずだ。特に現役の選手は彼らの投げ合いを見ていて、「すげぇな」と思っただろう。さらに「彼らのようになりたい」と感じた選手がいてもおかしくはない。それくらいシビれる試合だった。
日本には今後、メジャーに渡って活躍できる可能性のある選手がたくさんいる。向こうでやりたいと思っている選手が二人の投げ合いをみて感じるものがあったはずだ。5年後10年後、「ダルビッシュと田中の投げ合いに刺激された」という選手が出てくるのではないか。日本人にとっては、そう思わせてくれるくらいの衝撃的な試合だった。
小宮山悟(こみやま・さとる)
1965年、千葉県生まれ。早稲田大学を経て、89年ドラフト1位でロッテ・オリオンズ(現千葉ロッテマリーンズ)へ入団。精度の高い制球力を武器に1年目から先発ローテーション入りを果たすと、以降、千葉ロッテのエースとして活躍した。00年、横浜ベイスターズ(現横浜DeNAベイスターズ)へ移籍。02年はボビー・バレンタイン監督率いるニューヨーク・メッツでプレーした。04年に古巣・千葉ロッテへ復帰、09年に現役を引退した。現在は、野球解説者、野球評論家、Jリーグの理事も務める。