2015年、日本人投手最高の評価に輝くダルビッシュ有に立ちはだかる「2つの壁」【広尾晃の「ネタになる記録ばなし」】
ブログ「野球の記録で話したい」を運営中で『プロ野球解説者を解説する』(イーストプレス刊)の著者でもある広尾晃氏。当WEBサイトでは、MLBとNPBの記録をテーマに、週2回、野球ファンがいつもと違う視点で野球を楽しめるコラムを提供していく。今回は、ダルビッシュ有の2015年についてだ。
2015/02/16
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2. オークランド・アスレチックスの壁を越えられるか?
ダルビッシュが在籍するテキサス・レンジャーズは、アリーグ西地区に所属しているが、これまでの対戦の中で、苦手にしているチームがある。オークランド・アスレチックスだ。3年間のダルビッシュの球団別の対戦成績を見ていこう。
ダルビッシュはアリーグでボルチモア・オリオールズを除く13球団と対戦している。インターリーグも含めると、ほとんどのチームに勝ち越すか、五分の成績を残しているが、オークランド・アスレチックスだけには1勝8敗と大きく負け越している。
被本塁打、被打率もワースト2位。単に打ち込まれているというだけではなく、大事なところで痛打され、敗戦につながっている。
アスレチックスといえば「マネーボール」で有名なビリー・ビーンGMが率いるチーム。セイバーメトリクスを駆使して相手チームを徹底的に分析することで知られている。当然、ダルビッシュも裸にされているのだろう。
それは、15打席以上対戦した打者の被打率ワーストランキングを見ればわかる。
なんと、ワースト10の中に、アスレチックスに在籍した選手(すでに移籍した選手も含む)が4人も含まれている。
4人は、打撃タイトルに縁があるような大打者ではない。失礼ながら脇役、地味な選手たちだ。しかしダルビッシュとの対戦ではファウルで粘り、配球を読み、その結果、四球を選んだり、しぶとくタイムリーを打つ。
選手の資質もさることながら、チームとして「対ダルビッシュ対策」を徹底的に叩き込まれていることがうかがえる。選手の顔ぶれが変わっても、その作戦は不変のはずだ。
アスレチックスは、レンジャーズと同地区。19試合も対戦がある。エースとして、避けて通ることは絶対にできない。今年もアスレチックスが大きな壁として立ちはだかるのは間違いないだろう。
ちなみに野球データの専門サイト『FANGRAPHS』は、今季のダルビッシュを14勝9敗、防御率3.28、あるいは13勝7敗、防御率3.07と予想している。
もちろんその時々のチーム状況などが影響を及ぼす可能性はあるが、アメリカのアナリストは、ダルビッシュは様々な課題を克服して、活躍すると見ているのだ。
まだ28歳と若く聡明で、自己研鑽を惜しまないダルビッシュだ。壁を物ともせず2015年、飛躍するダルビッシュの姿を楽しみにしたい。