オークランド・アスレチックスに足りないのは「人情」だ!【田口壮の眼 第4回】
オリックス時代にはイチローとともに日本一に輝き、その後メジャーリーグではマイナーからすさまじい努力でメジャー昇格を果たし、カージナルス、フィリーズで世界一に輝いた野球解説者・評論家の田口壮氏。そんな田口氏に2015年のMLBをたっぷり語ってもらいました。最終回はいよいよ、今季のリーグ予想です。
2015/02/25
アリーグは大補強したボストン、ヤンキースは元気なし
――今季のペナントレースを予想してください。アメリカンリーグ、注目のチームは?
田口 何と言ってもボストン・レッドソックスです。大補強をしましたから。三塁を守るパブロ・サンドバルはぽっちゃりな体型ですが、守備は軽快です。打撃もパワーがあり勝負強く頼もしいです。対抗できるのは、エンゼルスでしょうか。そしてマリナーズがどこまでいけるのか。ネルソン・クルーズが入り、昨年よりさらに打力が上がっています。それにフェリックス・フェルナンデス、岩隈投手の2枚看板に加え、若い投手陣が充実しています。彼らが成長すれば十分優勝が狙えるチームだと思います。
――ヤンキースの名前が出てきませんね。
田口 補強できていないですからね。引退したデレク・ジーターの代わりにダイアモンドバックスからディーディー・グレゴリウスという若い選手を取りましたが、それ以外補強はありません。投手陣も、黒田博樹投手は日本へ帰ってしまったし、田中将大投手は去年の肘の怪我が完全によくなっているかという不安があるでしょう。エースのサバシアも故障あがりです。不安材料が拭い去れないので、現時点ではボストンのほうが上に行くのではないでしょうか。
――オークランド・アスレチックスはどうですか?
田口 このチームはとにかく不思議なチームです。僕の性格上、このチームは推さないんです(笑)。
――セイバーメトリクスに問題ありとお考えですか?
田口 数字は嘘をつかないから、セイバーは否定しません。ある程度はOKでしょう。しかし、オークランドを見ていると、最後の肝心なところを忘れていないか、という思いが常にあります。それは「人情」です。昨年はセスぺデスを出しました、レスターを入れました、果たしてそれでいいんですか?という気がするんです。今までセスぺデスをチームの中心に据えてきたのに、それをポンとトレード、チームはどうなりますか? 選手の気持ちを考えたことはありますか?と。レスターは球界を代表する投手ですが、5日に1回登板があって、勝つか負けるかわからない。そりゃ勝つ確率は高いでしょう。一方のセスぺデスは毎日出ています。彼で勝つゲームとレスターで勝つゲームどっちが多いんだ?そんな話になりかねないのです。
――ビーンGMはセスぺデスが嫌いだったのでしょうか?
田口 そうではなく、レスターの獲得に見合う選手がいなかったのでしょう。お金を使わずにデータでチームを作るのは非常にいいと思います。だからいい位置まで勝ち上がるけれど、勝ちきれない。ビーンGMばかり目立ちますが、オークランドはメルビン監督でもっている部分が大きいですね。優しくて選手とのコミュニケーションもうまくいっている。選手の気持ちを常に考える。それがメルビン監督です。
――ダルビッシュのいるレンジャースは昨年、最低勝率に沈みました。
田口 4月、5月で波に乗れれば勝機はあります。でもそうでなければ落ちるのは早いでしょう。ラテン系の選手が多いので、あきらめたら早い、そんな傾向があります。ただ、ダルビッシュ投手がエースで1年間フル稼働し、藤川投手がクローザーという形が出来上がればチームの安定感はグッとアップして楽しみになります。
― タンパベイ・レイズはいかがでしょうか?
田口 おそらく資金力の問題が大きい。強くなって選手の年俸が上がってきたら出さざるを得ない、そうなると解体モードになる。資金を使いすぎたのかもしれないですね。ベン・ゾブリストまで出したのは驚きました。彼はゲーマーです。ゲームを作ってくれます。彼まで出すということは、一度すべてを変えましょうということでしょう。マドン監督もいなくなったし、少しずつ方向転換し、新しいチーム作りに入っている感じです。