育成や指導に通ずる日米仕上げ方の違い アメリカのキャンプインはなぜ遅い?【元ドジャーススカウト、小島圭市の禅根夢標】
読売ジャイアンツなどでプレーし、その後ロサンゼルス・ドジャースの日本担当スカウトとして当時、黒田博樹投手や齋藤隆投手の入団に携わった小島圭市氏の連載。小島氏は現在、スポーツ環境の向上から青少年の育成に積極的に関わっています。今回のテーマは「日米両国のキャンプの考え方」についてです。
2015/02/22
日本各地ではプロ野球のキャンプが佳境を迎えている。一方、アメリカではヤンキースの田中将大などがキャンプ地入り、新シーズンへ動き始めている。開幕日が一緒であるにも関わらず日米ではキャンプの日程がまるで違う。その違いはどういう意味が含まれているだろうか。日米のキャンプを知る小島圭市氏に聞いた。
日米の違いは、仕上げ方のスピードにある
日米のキャンプの違いについて、まずスタートから違っていますよね。アメリカのキャンプは一番早いところで2月18日、遅いチームでは2月22日からです。日本では対外試合が始っている頃ですから、開幕の日にちが同じなのに、なぜと疑問に思って当然でしょう。
日米でキャンプに対する考え方が違っているというのが根底にあると思います。昔、ある日本の方に聞くと、「アメリカのようなキャンプの日程にしたら、体ができない」ということでした。しかし、実は、アメリカの選手たちはシーズンが終わってから2週間をすぎると、トレーニングを始めているのです。アメリカの選手にとってのキャンプというのは、調整期間という考え方があります。いかにして、シーズンにうまく入っていくか。この時期のアメリカの選手は何もしてないのではなくて、ものすごいトレーニングをしているのです。
「緩やかな曲線」と「急激な曲線」の違いということになるのではないでしょうか。緩やかな曲線で徐々に仕上げていこうとしているのがアメリカで、後者が日本だということになります。経済においても、何ごとにおいても共通することですが、急激な曲線というのは、落ちるのも急激になるものですから、アメリカは合理的に考えているのかもしれません。
先日、広島に復帰した黒田博樹選手が『8、9月をどれだけベストな状態で投げられるか』とコメントをしていました。実際、日本人の投手で、そのようなコメントをする選手を僕は聞いたことがありません。黒田選手はアメリカで7年間やってきて学んだことなのではないでしょうか。
MLBのキャンプの時期に関して話をさせていただくと、以前と比べても少し遅くなってきています。日数で言うと、4、5日から1週間程度でしょうか。その理由の一端には財政の問題があります。早く集まれば、それほど費用が掛かります。例えば、一人1日が滞在する費用が1万だったとして、100人なら100万になります。財政の問題で、遅めにしようというのがあると思います。マイナーのキャンプは、私の時は3月1日でしたが、今は3月10日、今季のドジャースは13日からと聞きました。その2週間後には公式戦が始まるわけですから、遅いといえます。
マイナーの場合は、より緩やかに育てていく段階にあります。ただ、私の見解としては、マイナーのキャンプについては早めていいようにも思います。マイナーだからこそ、もっとゆっくりする必要があるような気がします。マイナーの選手たちは、自分たちで練習すること、セルフコントロールができない子たちですから、メジャーより早くするべきではないかと個人的には感じます。