年間6億ドルを超える経済効果!? 新興アリゾナVS老舗フロリダのキャンプ地バトル【豊浦彰太郎の Ball Game Biz】
アメリカでのスプリングトレーニングは主にフロリダとアリゾナで行われている。両州は巨額の投資を行って、施設の充実を図り、MLB球団の招致に積極的だ。スプリングトレーニングによる経済効果が期待できるからだ。
2015/03/01
ブレーブスがキャンプ地の変更を検討
「スプリングトレーニングは希望の一語につきる」とは、ベースボールライターとして最高の栄誉とされるJ・G・テイラー・スピンク賞を2014年に受賞したロジャー・エンジェルの言葉だ。
確かにそうだ。スプリングトレーニング(以下ST)の時期は、全ての球団や選手、ファンが夢を抱くことが許される。私も過去何度かアリゾナのST地訪れたが、空港からレンタカー会社の合同配車センターに向かう無料シャトルバスは、いつも全米各地からやってきた贔屓球団のジャージを着たファンで一杯だった。バスの中では、見知らぬ者同士が来るべきシーズンへの期待を語り合っていた。長い冬が終わり、またベースボールの季節がやってきた喜びが満ち溢れていた。
そして、そんなST地のひとつにフロリダのオーランドがある。オーランドといえば、ディズニーワールドが世界的に有名だが、ブレーブスのST施設も併設している。そのブレーブスは現在、キャンプ地の変更を検討している。かと言って、同球団は現在の施設に不満があるわけでもない。彼らが移転を検討している理由は、他球団の動向に在った。
MLBのST地は、フロリダのグレープフルーツ・リーグとアリゾナのカクタス・リーグに分かれる。両方とも15球団から成る。
ブレーブスは前者の所属なのだが、そこでは広いフロリダ半島西部にヤンキース(タンパ)ら7球団、同東南部にはメッツ(ポートセントルーシー)ら3球団、そして中部にブレーブスら5球団が本拠地を置いている。
しかし、先日中部のアストロズ(キシミー)とナショナルズ(ビエラ、やや東海岸よりだが)が半島東南部のパームビーチ郡へ近い将来移転することが決まった。そうなると、中部はブレーブスとタイガース(レイクランド)だけになってしまう。そのうち、タイガースは比較的西海岸寄りなので、対戦相手にはさほど困らない。しかし、ブレーブスにとって近隣はタイガースだけになってしまう。その次に近いタンパエリアでも、片道2時間近く掛かる。これは、連日オープン戦が組まれるメジャーのキャンプでは切実な問題だ。
そもそもST地としてフロリダは「老舗」だ。それに対し、1957年以前には西海岸にMLB球団が存在しなかったとこともあり、アリゾナは球団数が少なく「後発」のイメージは拭えなかった。