年間6億ドルを超える経済効果!? 新興アリゾナVS老舗フロリダのキャンプ地バトル【豊浦彰太郎の Ball Game Biz】
アメリカでのスプリングトレーニングは主にフロリダとアリゾナで行われている。両州は巨額の投資を行って、施設の充実を図り、MLB球団の招致に積極的だ。スプリングトレーニングによる経済効果が期待できるからだ。
2015/03/01
スプリングトレーニングによる経済効果も
しかしこの状況は少しずつ変化し、特に近年のアリゾナの躍進は目を見張るものがある。特に、2009年にドジャースが48年から使用していたフロリダのベロビーチ(STの聖地的イメージもあった)から、アリゾナへ移転したことは象徴的な出来事だった。また、この年にはインディアンスが、翌年にはレッズがフロリダから移転した。これで、前述のとおりアリゾナはフロリダと同じ15球団となり、名実ともに対等となった。
ここまでアリゾナが隆盛になってきた理由としては、まずはフロリダとは異なり雨がほとんど降らない気候に加え地理的要因が挙げられる。広いフロリダ半島に各球団の施設が点在する「グレープフルーツ」では、バス移動は時間もかかるため、ベテランはアウェイでのゲームは見合わせざるを得ないケースも多い。
一方、「カクタス」は比較的狭い範囲に集中している。最も距離が離れている部類の和田毅のカブスのメサと、ダルビッシュ有と藤川球児のレンジャースとロイヤルズが共用するサプライズの間も、渋滞を避ければ1時間だ。したがって、アリゾナではブレーブスのように隣接球団の移転のため、自らも新しい本拠地を探さざるを得ないという事態は起こりえない。
見落とせないのがアリゾナの熱心な誘致活動だ。その裏付けは、もちろんSTの経済効果で、NPO法人のカクタス・リーグ・ベースボール・アソシエーションはそのインパクトはアリゾナ州全体にとって年間6億ドル(日本円で約717億円)を超えると2012年に発表している。そのため、巨費を投じて施設の充実に努めてきた。
昨年、15カ月の建設期間を経てオープンしたカブスのスローン・パークは、部分的にリグレー・フィールドを模したデザインで収容人員はカクタス・リーグ最大の15000人を誇り、連日大観衆を集めた。ここの場合などは、メサ市は8400万ドルもの公費を投入し、移転をちらつかせていたカブスを引き止めた。転出の場合の経済損失は、年間1億3800万ドルと見積もられていたためだ。
このように、「押せ押せ」のアリゾナに対しフロリダはやや後手に回っていた。実際、冒頭に紹介したアストロズやナショナルズの場合も、当初はアリゾナへの移転も噂されていた。しかし、最終的に移転先はフロリダ内となった。少々古いデータだが、NPO法人フロリダ・スポーツ・ファンデーションはSTの1球団あたりの経済効果を4700万ドル(約56億円)と試算している。これは無視できない。フロリダの巻き返しも始まってきたようだ。
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