ヤンキースのエースとして期待される理由 田中将大の驚異的なQS達成率【広尾晃の「ネタになる記録ばなし」】
ブログ「野球の記録で話したい」を運営中で『プロ野球解説者を解説する』(イーストプレス刊)の著者でもある広尾晃氏。当WEBサイトでは、MLBとNPBの記録をテーマに、週2回、野球ファンがいつもと違う視点で野球を楽しめるコラムを提供していく。今回は、田中将大のQS達成率の高さだ。2年目ながら、ヤンキースのエースとして期待される理由がよくわかる。
2015/03/03
Getty Images
QSは、「試合を作る」ことができる能力
ニューヨーク・ヤンキース、田中将大の右ひじの状態は「神のみぞ知る」というところだろうか。田中本人も「右ひじへの質問は、今シーズン中付いて回るだろう」と言っている。
2年目を迎える田中将大には、名門ニューヨーク・ヤンキース投手陣の屋台骨を背負うことが求められている。
安定感のあった黒田博樹が日本に帰り、エースのCCサバシアも故障明け。田中も故障明けではあるが、「計算できる」数少ない投手の一人として期待されている。
先発投手として「計算できる」というのは、好不調に関わらず、1年間先発ローテーションを守り、そして常に「試合を作る」ことができる能力だ。
これを表す指標にQS(Quality Start)というものがある。先発して6回以上を投げて自責点3以下に抑える登板のことだ。
6回自責点3と言えば、防御率は4.50。大したことないと思うかもしれないが、どんな名投手でもシーズンに数回は大崩れするものだ。
6カ月のレギュラーシーズンを通してQSをマークし続けるのは、至難の業だ。
田中のNPB以来のQSの記録を見てみよう。QS%は、先発登板数に占めるQSの割合で、規定投球回数以上の投手でのリーグ順位も記載した。2014年は規定投球回数に達していないので参考となる。
田中は、高卒で入団した1年目から先発ローテーションを守り、規定投球回数に達した。そのことだけでもすごい。しかし1年目は28回先発してQSは16回、リーグでも下位だった。11勝を挙げたものの、安定感は今一つだったのだ。
それが2年目以降になると、表の通りQS%は急上昇していく。2010年には遂に90%に達した。これは驚異的な数字だ。
2011年はさらに上昇し92.6%、QSをクリアできなかったのはわずか2試合だけだった。
しかし、この年はダルビッシュ有が28先発で27QS、QS%は実に96.4%をマーク。歴史的な好投をしたために、田中は2位に甘んじた。
翌年、ダルビッシュがレンジャーズへ移籍すると、田中のライバルはいなくなった。そして2013年、空前の27先発すべてQS、QS%100%という記録を樹立したのだ。
元阪神の小山正明が1962年にシーズン35QSという記録を作っているが、この時のQS%は87.5%だった。改めて、田中はNPB史上屈指の「安定感のある投手」だった。