田中将大が見せた類い稀な精神力。負けたら終わりの一戦で最高の投球で得たもの【小宮山悟の眼】
ヤンキースの田中将大投手は日本時間9日、ア・リーグ地区シリーズ第3戦に先発した。負ければ終わりの1戦でチームを救う力投を見せ、自身2度目のポストシーズンで初勝利を挙げた投球を振り返る。
2017/10/11
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ポストシーズン勝ち上がりで不安視される体調面
第3戦では好投を見せたが、ポストシーズンを勝ち上がった場合、不安視されるのは体調面だ。
この日のピッチングはコンディションの良さも影響している。レギュラーシーズンでは中4日でコンスタントに登板する。ポストシーズンを勝ち上がった場合、中4日あるいは3日で登板することもありうる。そこへの対応に少し不安が残る。
田中が多投するスプリットは、ひじへの負担が大きい。投げる際に手首の使い方がストレートと多少違う動きで腕を振る。それを繰り返すので前腕に張りが出てくるのだ。その回復に4日以上、できれば5日かかる。今後の登板は、今回のような投球ができなくても「打たれながら粘る」ということが重要になる。
9日の登板は「負ければ終わり」という状況。田中は強い精神力で、この1試合に全てを懸けなければならないという期待に応えた。4回表、1死三塁のピンチを連続三振で切り抜けた場面があった。あのような踏ん張り方ができるのは精神力の強さがあってこそ。抑えた後のアクションから伝わってきたが、気持ちが入ったときの田中の集中力はすさまじい。
日本にいた頃から、スコアリングポジションにランナーを背負うとスイッチが入った。全てのボールに集中力をもって投げるのは容易ではない。勝負どころでの粘りが今後は大事になってくる。
田中の投球で1勝したヤンキースは、次の試合も勝って2勝2敗のタイ。ポストシーズンは1人のピッチングでシリーズの流れが変わることもある。田中それに値するピッチングを見せたということだ。
小宮山悟(こみやま・さとる)
1965年、千葉県生まれ。早稲田大学を経て、89年ドラフト1位でロッテ・オリオンズ(現千葉ロッテマリーンズ)へ入団。精度の高い制球力を武器に1年目から先発ローテーション入りを果たすと、以降、千葉ロッテのエースとして活躍した。00年、横浜ベイスターズ(現横浜DeNAベイスターズ)へ移籍。02年はボビー・バレンタイン監督率いるニューヨーク・メッツでプレーした。04年に古巣・千葉ロッテへ復帰、09年に現役を引退した。現在は、野球解説者、野球評論家、Jリーグの理事も務める。