MLB屈指の“省エネ投手”岩隈久志の課題は「スタミナ」。今年はタイトル獲得のチャンスも!【広尾晃の「ネタになる記録ばなし」】
ブログ「野球の記録で話したい」を運営中で『プロ野球解説者を解説する』(イーストプレス刊)の著者でもある広尾晃氏。当WEBサイトでは、MLBとNPBの記録をテーマに、週2回、野球ファンがいつもと違う視点で野球を楽しめるコラムを提供していく。今回は、岩隈久志の2015年についてだ。
2015/03/17
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岩隈はアリーグで1番効率的な投球をする投手
ダルビッシュ有のトミー・ジョン手術が決まり、田中将大は完全復活へ向けてオープン戦で投げ始めたばかり。
何かと不透明要素が多い日本人投手の中で、シアトル・マリナーズの岩隈久志は順調だ。 3月7日のオープン戦では2回を投げ22球、無安打無失点だった。
ダルビッシュや田中のような派手さはないが、岩隈久志の評価は極めて高い。いわば玄人好みのする投手と言えよう。
岩隈が第一に評価されるのは「超省エネ投球」であること。
2014年のアメリカンリーグ、規定投球回数以上の39人の1イニング平均投球数のランキング。参考までにダルビッシュ有と田中将大の記録も付けた。
岩隈はアリーグで1番効率的な投球をする投手なのだ。
2位には、ツインズのエースのフィル・ヒューズ、3位には岩隈のチームメイトで昨年の防御率1位、フェリックス・ヘルナンデスがいる。黒田博樹も優秀な数字だ。
1回あたりの球数が少なければ、同じ球数でも長いイニングを投げることができる。先発投手にとっては、非常に重要な指標なのだ。
この数字を少なくする要因には大きく分けて二つある。
一つ目は「四球を出さない」こと。四球を多く出す投手は、球数を節約することはできない。制球力が求められるのだ。
二つ目は「安打を打たれない」こと。安打を多く打たれる打者は、1回あたりの対戦打者数が増えるから、球数も増える。球威、球のキレが求められる。
球数が少ない投手は、そのどちらか、あるいは両方の長所を持っている。
岩隈はどうだろうか。
アリーグ規定投球回数以上の投手の9イニングあたりの四球数(BB9)と、安打数(H9)のランキングを見てみよう。これも参考までにダルビッシュ有と田中将大の記録も付けた。
岩隈はBB9では2位。完投しても1人歩かせるかどうかという数値だ。しかしH9は39人中20位。つまり抜群の制球力を持つが、安打はそれなりに許しているということになる。
BB9が1位のフィル・ヒューズも同じタイプ。黒田博樹も同じだった。
フェリックス・ヘルナンデスは、BB9もH9もベストテンに入っている。彼が、現役最高の投手の一人と言われるのは、制球と球威、キレを併せ持っているからだ。ダルビッシュは岩隈とは反対のタイプ。田中は岩隈と同タイプだと言えるだろう。