平野と牧田がメジャーで通用した理由は? 見事な制球に多彩な投球術、そして今後の課題は…【小宮山悟の眼】
今季のメジャーリーグでの日本人ルーキーといえば、ロサンゼルス・エンゼルスの大谷翔平投手が脚光を浴びているが、日本でリリーバーとして活躍した平野佳寿、牧田和久の2投手もいい形で起用されている。
2018/04/19
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うれしい誤算の牧田、活躍の要因は浮き上がる球
一方、牧田はうれしい誤算と言えるほどの活躍だ。
サイドスローという特殊な投げ方のため、打たれながら“のらりくらり”と打者をさばいていくと思っていたが、ぴしゃりと抑えている。彼のようなタイプがメジャーの打者を抑えるためには、ゴロを打たせる沈むボールを投げ込んでいくイメージだったが、最近の投球を見ていると高めに浮きあがるボールで勝負している。
牧田の球速で高めで勝負するという想像はしていなかったので驚いた。基本的に投手が高めのボールを投げることはリスクを伴う。特に球速が遅い投手はなおさらだ。沈むボールを使うと予想される投手があえて遅いボールを高めに投げてくる。牧田が打者を抑えられている要因はここにあるだろう。
しかし、これから地区内で何度も対戦することによって、打者は牧田の投球に慣れてくる。打者は変化球などの沈むボールを意識しながら、高めのストレートはファウルで逃げるなど対応策を練ってくるだろう。そのときに牧田がいかに対処するか。
牧田は球種、フォームと多彩なピッチング技術を見せている。クイック気味に投げる演出をしたりしているので、いかに投球技術を駆使して乗り切っていくか。牧田は平野とは異なり、必ずしも勝っている状況での起用ではない。しかし、課題をクリアしていくことで役割は上がっていくだろう。
今後の2人に期待したいが、課題となるのはコンディショニングだ。スケジュールがタイトになるということもあるが、日本とは異なる環境でいかに調整するか。
メジャーは日本のようにコーチが細かく指示を出すことはない。しかし、指示がないからと言って何もしなくていいわけではない。強制的にやらせないだけで選手自身がビジョンを持って体を整えていくことが重要だ。指示がないからやらないという姿勢だと、いいピッチングは続けられない。
今季、平野と牧田の2人が活躍することによって、改めて日本人投手の評価が高まるだろう。メジャーリーグスカウトが大谷翔平のようなタイプだけでなく、日本人リリーバーにもフォーカスするきっかけになるように頑張ってほしい。
小宮山悟(こみやま・さとる)
1965年、千葉県生まれ。早稲田大学を経て、89年ドラフト1位でロッテ・オリオンズ(現千葉ロッテマリーンズ)へ入団。精度の高い制球力を武器に1年目から先発ローテーション入りを果たすと、以降、千葉ロッテのエースとして活躍した。00年、横浜ベイスターズ(現横浜DeNAベイスターズ)へ移籍。02年はボビー・バレンタイン監督率いるニューヨーク・メッツでプレーした。04年に古巣・千葉ロッテへ復帰、09年に現役を引退した。現在は、野球解説者、野球評論家、Jリーグの理事も務める。
氏原英明