大谷翔平、「スプリットの投げすぎ」は杞憂だ。それ以上に物足りないものは…【小宮山悟の眼】
ロサンゼルス・エンゼルスの大谷翔平投手は5月1日(日本時間2日)に予定されていた5試合目の先発登板を回避した。走塁の際に左足首をねん挫した影響のようだが、大事には至っていないようだ。今回はこれまでの大谷の投球を振り返りたい。
2018/05/03
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物足りないストレートの制球
オークランド・アスレチックスを7回途中までパーフェクトに抑えていた2試合目の登板は、スプリットのコントロールがしっかりできていた。アスレチックスとは2回目の対戦で余裕が生まれたという側面もあっただろうが、あのピッチングが理想だろう。
しかし、相手打線が強力になると力んでしまうこともある。アストロズ戦はまさにそんな投球だった。6回途中4失点、5四球と制球に苦しんだ。
投手心理として、「抑えなければならない」「打たれてはいけない」と思えば思うほど、力みが生じる。この力みによってリリースポイントが一定せず、ボールが暴れることが往々にしてある。試合を重ねる中で、自分のピッチングをコンロトールできるようになれば大きく改善されるはずだ。
また、アストロズ戦ではストレートが最速163キロを記録し、いい球を投げていた。そのため、スプリットばかりではなく、ストレートを投げるべきだという議論が生まれるのもよくわかる。だが、メジャーのエース級と比較すると、精度はまだ甘いというのが現状だ。
外角低めに決まれば問題ないが、いつも投げられるわけでない。コントロールに関して言うと、大谷のストレートはアストロズのジャスティン・バーランダー投手に比べると物足りなさが残る。
ストレートの精度がそこまで高くないので、大谷は打者の目先を変えながら投げる必要がある。その策としてスプリットを用いているのだろうが、それが抜けてしまった場合に苦しい状況になる。
外角低めに力強いストレートを投げられる実力があることは間違いない。今後はストレートの精度を上げることと、スプリットが抜けるというのを減らすことで大谷のピッチングは大きく変わるだろう。
メジャーリーグが開幕してようやく1カ月が経過したところだ。登板を重ねるごとに様々な経験が蓄積される。着実にステップアップできれば、ピッチングに凄みが増してくるのではないか。身体の状態がベストであること前提だが、4月と9月の投球内容がガラリと変わっていることを期待したい。
小宮山悟(こみやま・さとる)
1965年、千葉県生まれ。早稲田大学を経て、89年ドラフト1位でロッテ・オリオンズ(現千葉ロッテマリーンズ)へ入団。精度の高い制球力を武器に1年目から先発ローテーション入りを果たすと、以降、千葉ロッテのエースとして活躍した。00年、横浜ベイスターズ(現横浜DeNAベイスターズ)へ移籍。02年はボビー・バレンタイン監督率いるニューヨーク・メッツでプレーした。04年に古巣・千葉ロッテへ復帰、09年に現役を引退した。現在は、野球解説者、野球評論家、Jリーグの理事も務める。