大谷、データが語る好投の背景。“ゆとり”生んだ緩急…最速160キロの影で光ったモノは
2018/05/07
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5回まで毎回奪三振を記録
ロサンゼルス・エンゼルスの大谷翔平投手が6日(日本時間7日)、敵地セーフコ・フィールドで行われたシアトル・マリナーズ戦に先発登板。7回途中2失点の好投で、今季3勝目をマークした。
大谷の登板は今季5試合目。4月24日(同25日)のヒューストン・アストロズ戦以来12日ぶりだった。4月27日(同28日)に左足首を捻挫して以来初めてのマウンドで、過去にサイ・ヤング賞を受賞した通算164勝を挙げているエース右腕フェリックス・ヘルナンデス投手との投げ合い。
大谷は初回を3者凡退に抑えると、2本の本塁打で2点の援護を受けた2回も2三振を奪うなど力投。その後も5回まで毎回奪三振を記録して無失点のイニングを重ね、6回もスコアボードに0を刻んだ大谷は、この時点で自身メジャー最長となる8回まで投げる可能性も出てきた。
しかし7回、安打でこの試合初めて先頭打者の出塁を許すと、続くライアン・ヒーリー内野手にはフルカウントからスライダーを完璧に捉えられ、これがレフトスタンドへの2ラン本塁打。後続に四球を与えた大谷はここで降板し、この日は6回0/3を投げて球数は98球(ストライク59球)。被安打6、与四球2、与死球1、奪三振6、失点2の内容で防御率を4.10とした。試合は、9回にも2点を追加したエンゼルスが8-2で勝利。大谷は4月8日(同9日)以来となる今季3勝目(1敗)をマークした。
大谷は、6回まで順調な球数とリズムでマリナーズ打線を抑えていったが、7回はスライダーが抜けたり速球がシュート回転するなど突如乱調に。降板後ベンチに戻った時の表情は、悔しさとともに怒りが込められたようなものだった。
制球抜群のスライダー、過去最多となったカーブ
この日の大谷のストライク率は60.2%で、イニング毎に分けると初回11球(ストライク8球)、2回19球(同11球)、3回11球(同7球)、4回18球(同11球)、5回17球(同10球)、6回9球(同7球)、7回13球(同5球)だった。初球ストライクは打者26人に対して半分の13度。この13度のうち7度が4回までに記録したものである。
また、各打者3球を投じたところで0-2、1-2と追い込んだのは7度あった(3球以内で打ち取ったものは除く)。これも4回までに6度記録していることから、いかに序盤からストライク先行で優位に立って勝負をしていたかが分かる。
そして、球種。投じた98球に対して速球が48球で全体の約49%を占め、そのうち30球がストライク。その他スライダーが28球、カーブ、スプリットが11球ずつだった。特に、この日はカーブが自身過去最多を数えた。ストライクは5球と多くはなかったが、見逃しで1球、空振りを含むスイングさせたのが4球あった(最終球となった2球はいずれもロビンソン・カノー内野手、ジーン・セグーラ内野手の外野フライ)。打者によって得意、不得意があるので単純にカーブの球数の増減が勝敗を大きく左右したととまでは言えないかもしれないが、投球の幅が広がったことは確かだろう。
また、2番目に多かったスライダーは28球中20球がストライク。打ち取った最終球になったのは10球で、そのうち4球が三振を奪った際に投じたものだった。一方で、少なかったのがスプリット。数自体も少なかったが、アウトに取った最終球として用いられたのは2回の3度のみだった。
最速99.5マイル(約160キロ)を投じながらも、スライダーとカーブを多く駆使し、ともに精度が良かったため、決め球の代表格でもあったスプリットを少なくしてもなお余裕を感じさせる投球内容だった。12日ぶりという長い投球間隔もあったため、調整は難しかったかもしれないが、左足首の負傷からの復帰後初登板としては十分な活躍ぶりである。
大谷の次戦は、打者として出場予定。これまで通りのローテーションなら中1日空けて8日(日本時間9日)に行われる敵地でのコロラド・ロッキーズ戦だが、これはインターリーグでナショナル・リーグの本拠地での試合。投手が打席に立つため指名打者制ではなく、これまでメジャーで野手としての出場がない大谷は代打での起用が予想される。