カノー薬物規定違反…効果と禁止の背景とは。“暗黙のルール”への影響も「疑わしきは…」
MLBは15日(日本時間16日)、シアトル・マリナーズのロビンソン・カノー内野手に対し、薬物規定違反で80試合の出場停止処分を科した。禁止薬物「フロセミド」の陽性反応を示したためだが、本人には禁止薬物の認識はなかったという。では、フロセミドの使用にはどのような意図があったのか。筆者の専門であるスポーツ生理学の視点を交えて考えたい。
2018/05/17
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「疑わしきは賞せず」の暗黙のルール
「疑わしきは罰せず」が刑事裁判の鉄則だが、メジャーリーグには「疑わしきは賞せず」ともいうべき暗黙のルールがある。野球殿堂入り選手の選考がそうだ。10年以上メジャーリーグで現役生活を送り、引退から5年以上が経過した候補者は全米野球記者協会の投票によって殿堂入りが決まる。
カノーは現在メジャーリーグ14年目、通算2417安打、305本塁打305、通算打率.304の成績。ここまでは殿堂入りにふさわしい成績を残しているが、今回の処分は将来の選考に黄信号を灯したと言えるだろう。殿堂入りするには十分すぎる成績を残しながらも、禁止薬物使用の疑いがあるために殿堂入り資格取得後初の選考から漏れている元選手もいる。通算762本塁打のバリー・ボンズ、サイ・ヤング賞7度受賞のロジャー・クレメンス、通算打率.308のマイク・ピアッザ、通算609本塁打のサミー・ソーサなど枚挙にいとまがない。
重苦しいニュースではあるが、最後に少しだけ明るい希望を述べたい。マリナーズはカノーの長期欠場に伴い、ディー・ゴードン外野手を本来のポジションである二塁手として起用するという。つまり、マリナーズの外野陣が再び手薄になる。球団会長付特別補佐となり、2018年残りのシーズンは選手として出場しないと発表したばかりのイチローだが、予定を変更して電撃復帰、そんなニュースが飛び込んでくることを期待したい。
文・角谷剛
(米国公認ストレングス・コンディショニング・スペシャリスト/コーチング及びスポーツ経営学修士:カリフォルニア州コンコルディア大学/CrossFit L1 公認トレーナー)