父は殿堂入り選手…ゲレーロJr.が2Aで大爆発中 MLBの歴史彩る遺伝子が今年も躍動
2018/05/23
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現在2Aで打撃“4冠”メジャー昇格なら新人王争い混戦
米公式サイト内の『MLB Pipleline』で若手有望株2位にランクされているブラディミール・ゲレーロ・ジュニア内野手が、トロント・ブルージェイズ傘下2Aニューハンプシャー・フィッシャー・キャッツで驚異的な活躍を続けている。
今季ここまでの40試合で打率.423、 8本塁打、45打点、OPS(出塁率+長打率)は1.168で、安打数、打点、打率、OPSの4分野でリーグトップの成績。直近10試合に限ると38打数20安打で打率はなんと5割を超えている。
ゲレーロ・ジュニアの父親は、今年野球殿堂入りを果たした通算2590安打、449本塁打を誇るブラディミール・ゲレーロ元外野手。父がモントリオール・エクスポズに所属していた時にカナダで生まれ、カナダとドミニカ共和国の両方の国籍を持つ。
上の成績からすると未だにマイナーリーグにいるのが不思議なぐらいだが、ゲレーロ・ジュニアの生年月日は1999年3月16日で、19歳2カ月になったばかりである。日本プロ野球と比較すると、メジャーリーグの場合は10代で昇格する例はさほど多くない。現役選手ではブライス・ハーパー外野手(ワシントン・ナショナルズ)やマイク・トラウト外野手(ロサンゼルス・エンゼルス)といったスーパースターの名前が頭に浮かぶ。
19歳でやはりドミニカ共和国出身のフアン・ソト外野手が、ワシントン・ナショナルズに昇格した翌日の5月21日に初先発初打席でホームランを放ってニュースになったばかりだが、ゲレーロ・ジュニアはソトより約5カ月若く、今季中にメジャー昇格となればさらに話題を呼ぶことは間違いない。
今季のメジャーリーグでは、前述のソトに加えて、20歳のロナルド・アクーニャ外野手(ベネズエラ出身、アトランタ・ブレーブス)、21歳のグレイバー・トーレス内野手(ベネズエラ出身、ニューヨーク・ヤンキース)がそれぞれ素晴らしい活躍を見せている。大谷翔平投手(エンゼルス)の大活躍は言うまでもない。ここにゲレーロ・ジュニアが加わるとなれば、今季の新人王争いは歴史的な大激戦になるだろう。
受け継がれるDNA…ブーン、フィルダー、日本では長嶋、野村
ゲレーロ・ジュニアは、野球殿堂入りの父を持つだけではなく、叔父のウィルトン・ゲレーロ氏も元メジャーリーガーであるし、従兄弟のガブリエル・ゲレーロ外野手は現在シンシナッティ・レッズ傘下3Aに所属している。ゲレーロ一族だけではなく、メジャーリーグには2世や3世、さらに親戚、兄弟の選手が非常に多い。
1990年に親子で連続本塁打を放ったケン・グリフィー親子は最も有名なところで、父シニアは通算152本塁打、ジュニアはメジャー歴代6位の630本塁打を記録。また、ともに通算319本のホームランで並んだセシル・フィルダー氏とプリンス・フィルダー氏の親子もいる。殿堂入りしたロベルト・アロマー氏とカル・リプケン・ジュニア氏も2世選手だ。現役選手では、シアトル・マリナーズのディー・ゴードン外野手の父親トム・ゴードン投手も通算138勝を挙げた元メジャーリーガー。
3世代でメジャーリーガーになったのが、レイ・ブーン氏(祖父)、ボブ・ブーン氏(父)、ブレット・ブーン氏(兄)、アーロン・ブーン(弟・現ヤンキース監督)で、この4人ともオールスターに出場している一流選手だ。さらにはブレットの長男ジェイク・ブーンも2017年度ドラフトでワシントン・ナショナルズから指名を受けているが、入団はしていない。
3兄弟全員がメジャーリーグの捕手になったのが、ベンジー、ホセ、ヤディアーのモリーナ兄弟で、3人全員がワールド・シリーズ優勝を経験している。父はメジャーリーガーではないが、母国プエルトリコの野球選手だった。
長きにわたるメジャーリーグの歴史で、受け継がれてきたDNAはその活躍とともに今も昔もファンの心を掴んでいる。
一方、日本プロ野球では長嶋茂雄氏・一茂親子と野村克也氏・克則親子が有名だが、親子ともスター選手になる例はあまりないようだ。元メジャーリーガーで現オリックス・バファローズ2軍監督の田口壮氏は、著書『野球と余談とベースボール』の中で、メジャーリーグに2世選手が多く、日本にさほど多くない理由として「プロ野球選手がアマチュア選手を指導することを禁止したプロアマ規定の影響が大きい」としている。