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ホワイトソックス・捕手カスティーヨが出場停止、MLBでまたも発生した薬物規定違反にみる“皮肉な現象”

2018/05/25

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 MLBは24日(日本時間25日)、シカゴ・ホワイトソックスのウェリントン・カスティーヨ捕手に対し、薬物規定違反で80試合の出場停止処分を科したと発表した。禁止薬物の陽性反応については、先日、シアトル・マリナーズのロビンソン・カノー内野手が処分を受けたばかり。しかし、スポーツ生理学を専門とする筆者は、今回はこれまでのMLBのドーピング事例とは異なるケースだと考える。
 
 カスティーヨはドミニカ共和国出身、メジャー8年目を迎える。これまで5球団を渡り歩き、今季加入したホワイトソックスでは正捕手として、ここまで打率.270、6本塁打とまずまずの成績を残している。
 
 カスティーヨが使用したのは「エリスロポエチン(Erythtopoietin)」通称EPOと呼ばれる薬物である。EPOは本来は主に腎臓で自然に作られ、赤血球の分化・増殖を促進する造血ホルモンである。
 
 人為的なEPOの摂取は、赤血球を増やして酸素運搬能力を高め、持久力を劇的に向上させることが可能になる。いわゆる血液ドーピングと呼ばれるもので、競技の公平性と副作用の危険から世界アンチ・ドーピング機構の禁止薬物リストに入っている。
 
 今回のケースが今までメジャーリーグで起きたドーピングと決定的に異なるのは、カスティーヨがEPOを使用して持久力を高めたとしても、それが競技上有利に働いたとは思えない点だ。
 
 過去に発覚したEPOのドーピングで最も有名なのは、元自転車プロロードレース選手のランス・アームストロングの事例だ。ツール・ド・フランス7連覇の偉業をはく奪され、自転車競技から永久追放の処分を受けた。
 
 EPOの使用が有利に働くのは自転車競技や水泳などの持久力系スポーツであって、主にパワー系のスポーツである野球選手があえて使用する理由は考えにくい。捕手というポジションはほかの野手と比較すれば持久力が要求される。しかし、出場停止というリスクを考慮すると、違反を犯すほどのメリットはないと考えるのが自然である。
 
 血液ドーピングという性質上、サプリメントや薬に含まれていたという理由で本人が無意識にEPOを摂取することはありえない。カスティーヨは何らかの理由でEPOを意図的に摂取したことになるが、理由は明らかになっていない。EPOの本来の目的は腎性貧血の治療である。カスティーヨが治療を必要としているのであれば、MLBの薬物規定が治療を妨げていることになる。
 
 年々対象が増える禁止薬物リストが原因で、メジャー選手に限らず、アスリートはかぜ薬さえ自由に摂取できない状況になりつつある。選手の生命と健康を保護することが目的だったはずのアンチ・ドーピング規定が逆に選手の健康を損なっているかもしれないのは皮肉な現象と言わざるを得ない。
 
 
文・角谷剛(米国公認ストレングス・コンディショニング・スペシャリスト/コーチング及びスポーツ経営学修士:カリフォルニア州コンコルディア大学/CrossFit L1 公認トレーナー)



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