「中速ギアでは勝てない」田中将大の新スタイルは通用するのか?
日本人として初めて名門球団の開幕投手の座を託された田中将大。しかし6日のブルージェイズ戦は、4回5安打5失点という結果に終わった。この登板内容から何が見えてくるのだろうか。
2015/04/08
Getty Images
ツーシームの課題
そう踏まえれば、田中の「ちょっとした部分で、また良い方向に変われる」という言葉に感じられた余裕も、納得のいくものではある。
もちろん、本当にギアをこれ以上に上げられるのか。また、その負荷に右肘が耐えられるのか。それは誰にもわからない。
一つわかったことは、この中速ギアとでもいう状態では、メジャーを舞台に勝ち続けることは不可能だということだ。
昨年、面白いように空振りの山を築いたスプリットも、3回以降は低めは見極められ、中途半端なコースはファウルで逃げられた。
空振り量産には、95マイル(153キロ)前後だったフォーシームが伏線として生きていたからだ。見せ球が、90マイル(145キロ)のツーシームでは、最大の武器スプリットの威力を半減させてしまう。
そして、軸となるツーシームの制球も、まだ確固たるレベルには達していない。例えば広島に復帰した黒田博樹なり、全盛期のグレグ・マダックスなり、ツーシームの熟練した使い手に比べれば大きく見劣りするのは確か。甘く入ったところを仕留められるリスクは、当面は付いて回る。
開幕戦の黒星は、投球以外にも不運が重なった。三塁手チェース・ヘドリーの守備はずさんで、大きく足を引っ張られた。初失点につながったレイエスのバント処理の失策は、状況を考えれば守備位置も一歩目の速さもずさんだった。流れが向かなかったのは確か。数字ほど内容は悪くなかったが、去年のように支配的な投球を求めるのも現状では酷だった。
日本人投手としては、野茂英雄、松坂大輔、黒田博樹に続く4人目の大役だったが、周囲に比べ、田中本人もチームも、大きなものは求めていなかった。
そう捉えるなら、この先は確かにある。だが、それを思い描く理想像に近付けることができるかは、誰にもわからない。
田中将大という投手のスタイルの、大きな転換点になるであろう一戦。方向性は示した。あとは投球のギアを上げ、枝葉の肉付けを厚くしていくしかない。
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